号外:第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)開催-③

例えば世界中で電気自動車(EV)が普及すれば、世界の電力需要は増加します。日本の場合、発電部門は温暖化ガス総排出量のうち4割を占めていますが、さらに増加する電力需要を脱炭素電源で賄わなければなりません。2011年の福島第1原子力発電所での事故以降、国内では脱炭素電源としての原子力発電に関する議論が滞り、原発の再稼働も進んでいません。その一方で、国内の原子力発電に関する技術・技術者が近い将来に枯渇してしまうとも言われています。原子力発電を巡っては国内でも意見が分かれていますが、これ以上議論を棚上げにするのではなく、冷静に議論して、はっきりした方針を確認すべきと思います。

<脱炭素電源>

“各国が削減目標を達成するうえで重要なのが、排出量の大半を占める発電部門だ。日本の場合、排出量全体の4割を占める。そのため排出量の多い石炭火力発電を減らし、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを増やす動きが加速している。2019年の電源構成のデータをみると、ドイツ、スペイン、英国の再生可能エネルギーは4割前後で日本の2倍の水準だ。再生可能エネルギーと原子力発電を合わせた脱炭素電源の比率は5~6割に達する。フランスは再生可能エネルギー比率が2割程度だが原発比率が7割で、合わせて電源の9割超が「脱炭素電源」といえる。”

主要各国の電源構成

電源の脱炭素化で先行する欧州先進国に比べて、日本は足元にも及ばない。再生可能エネルギー比率は2割に届かず、原発も再稼働が進まず6%台。脱炭素電源は合わせて2~3割にとどまっている。足元では石炭火力が3割超を占め、2030年度でも約2割を頼る。COP26では日本の状況が批判を受けることも予想される。米国は脱炭素電源の比率が37%程度で、2035年までに電源を脱炭素化する方針を掲げる。中国は電源の65%を石炭に頼り今後も稼働を控えるプラントが多い。再生可能エネルギーの導入を力強く進める中国だが、石炭に頼り続ける姿勢は国際社会から強い批判にさらされている。”

“COP26で議長国を務める英国のジョンソン首相は、石炭火力発電所について先進国は2030年まで、途上国も2040年までの廃止を要求している。石炭火力発電に頼る中国やインド、米国、日本などは対応を迫られるが、合意は難しい状況だ。国際エネルギー機関(IEA)によると2019年の石炭火力による発電量は中国が5兆キロワット時弱と突出して多い。これは日本の再生可能エネルギーや原子力も含めた総発電量の5倍に相当する。G7各国は日本を除き、石炭火力の廃止や、排出量を実質ゼロにする目標年限を定めている。フランスは2022年、英国は2024年、イタリアは2025年を掲げている。カナダは2030年の原則廃止をめざしている。ドイツは石炭火力の廃止を2038年までとしてきたが、9月の連邦議会選(総選挙)の結果、2030年への前倒しをめざす動きが出てきている。日本は古くて効率の悪い石炭火力を減らすが、廃止時期は明示しておらず、世界からは消極的にも映る。

各国の石炭火力と原子力発電量

“石炭火力を減らし、太陽光や風力などへ移行する取り組みが必要になるが、再生可能エネルギーの大量導入はすぐには進まない。「曇天無風」と呼ばれる発電に向かない時間帯が生じる恐れもある。出力を変えやすいガス火力発電所を再生可能エネルギーと組み合わせて使うのが一般的だが、欧州でガス価格は急騰。ここにきて発電時にCO2を排出しない「脱炭素電源」で、天候の影響を受けない原子力発電を見直す動きが世界では出てきている。英政府は小型モジュール炉を含む原発の開発や技術維持のために新たな基金を創設すると表明した。フランスのマクロン大統領も10月12日、10億ユーロ(約1300億円)を投じ、発電規模の小さい原子炉「小型モジュール炉」を2030年までに国内で複数導入すると発表した。日本でも自民党から小型モジュール炉を活用し、国内原発の建て替えを進めるべきだとの声が出ているが、東京電力福島第1原発の事故もあり、国民の理解を得るのは簡単ではない状況だ。

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