号外:焼酎、幻の琥珀色!
みなさんはお酒を飲まれるでしょうか。「若者のアルコール離れ」という話も聞こえてきますが、私は若い頃からお酒をこよなく愛してきました。昔は結構無茶な飲み方もしましたが、今では年相応におとなしくお酒を楽しんでいます。ビール、焼酎、日本酒、ワインにウイスキーと何でも飲むのですが、甘いお酒は苦手です。さて、今回は焼酎にまつわる話題です。
2021年6月29日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
”日本酒、ウイスキーと比べ海外での知名度が低い焼酎。欧米がボトルの容量規制を緩和し輸出拡大の好機だが、業界の足並みがそろわない。ネックは約70年続く「色規制」だ。長期熟成の証である高級感のある「琥珀(こはく)色」のまま出荷できない。政府は焼酎を輸出拡大の重点品目に定めるが、国際競争力がそがれている。”
”焼酎はまだ世界に発見されていない。感動を届けるべく海外向け新製品を展開する」。鹿児島県の浜田酒造は5月中旬、輸出専用の芋焼酎「DAIYAME40」を発表した。焼酎はアルコール度数が20~25度が一般的だが、焼酎のような蒸留酒をカクテルにする海外の飲み方に合わせて、40度と高めに設定した。「黒霧島」で知られる業界最大手、霧島酒造(宮崎県)も今夏、米国や中国、東南アジアで初の市場調査に乗り出す。新型コロナウイルス感染拡大に伴う「宅飲み」需要を想定する。”
”一部企業が海外展開に動き始めた背景には欧米の規制緩和がある。2020年末、米国向けに新たに720ミリリットル(四合瓶)や1.8リットル(一升瓶)など4種類のボトルで輸出可能になった。同様の規制緩和は欧州連合(EU)でも2018年に実施。EU、米国ともに関税はなかったが、ボトルを詰め替えねばならないことが非関税障壁となっていた。日本酒にはこうした容量規制はない。”
”焼酎の海外展開は他の酒類と比べて大きく出遅れている。過去10年、輸出額は年15億円前後で横ばい。2010年に焼酎と同水準だったウイスキーの輸出額は、2020年に焼酎の約23倍の271億円になった。日本酒(清酒)も241億円に達している。欧米の規制緩和は輸出拡大に追い風となりそうだが、業界全体では動きは鈍い。焼酎を輸出する南山物産(東京・杉並)の中山大希社長は「『色規制』に手を付けない限り焼酎の輸出拡大は難しい」と話す。色規制は、焼酎はウイスキーの10分の1程度の色の濃さとする国税庁の通達。同じ蒸留酒のウイスキーと区別するために1950年代に定められた。焼酎には、蒸留を繰り返して高純度のアルコールを取り出す甲類と、じっくり蒸留する乙類がある。本格焼酎と呼ばれる乙類は、木のたるで長期熟成するとウイスキーなどと同じく濃い琥珀色になる。だが、色規制のためにろ過したり薄めたりして出荷している。”
”琥珀色の蒸留酒は海外では高級酒と認知される。炭でろ過し色を薄めた本格焼酎を手掛ける六調子酒造(熊本県)の池辺道人社長は「海外では無色という理由だけで高級酒と見てもらえない」と話す。実は政府は、欧米への規制緩和の働きかけに加え、色規制の緩和にも動いた。2021年2月に国内の水を使用するといった「ジャパニーズウイスキー」の定義が定められ、色で焼酎と区別する意義は薄れている。だが、政府関係者によると、焼酎の税制優遇(アルコール度数37度未満では焼酎の税率はウイスキーより低い)を巡る懸念から焼酎業界の足並みがそろわず、色規制緩和は先延ばしになった。「色規制がなくなればウイスキーと同等に扱われ、税制優遇も見直されてしまう」という懸念から、琥珀色になる長期熟成の焼酎を手掛けていないメーカーからの賛同を得られなかった。”
”国内の焼酎市場は販売数量で2007年度をピークとして約25%減少した。国内での減少を補おうと、政府は2020年11月、輸出拡大実行戦略の重点品目に本格焼酎を指定。2025年までに輸出額を3倍強の40億円に高める計画を掲げる。しかし、こうした混乱が続くようでは、「焼酎」という日本初のブランドを生かす機会を逸しかねない。”
全体的に何となく釈然としない点が多い話です。国税庁の通達によって、(琥珀)色の濃さで焼酎とウイスキーを区別していたとは知りませんでした。しかし現在ではあまり意味のあることのようには思えません。色規制が緩和されることで焼酎の優遇税制が見直されることが心配なのであれば、焼酎を輸出拡大重点品目に指定している政府に、優遇税制は維持されるという確認を取り付ければ良いのだと思います。また、「琥珀色の蒸留酒は海外では高級酒と認知される」とのことですが、ウォッカやジンは透明な蒸留酒で、世界的な有名ブランドも存在しています。このところ日本製のジンが注目されているというニュースもありました。私も焼酎は良く飲むのですが、国内市場が縮小しているという現実があるのですから、どのようにして輸出を拡大するのかを業界内で良く検討して欲しいと思います。日本の焼酎が海外で愛される可能性は、十分にあると思います。