号外:おでんに映るインフレ日本

今日(2月26日)の西宮市の瀬戸内海沿岸は好天で、日射しが温かく感じられます。先週までは「今シーズン最強の居座り寒波」の影響でとても寒い日が続きました。日本海側のような大雪にはなりませんでしたが、このあたりでも日に数回、雪やみぞれが舞うことがありました。寒い冬の楽しみは「おでん」ですね。日本酒や焼酎にも合いますし、私も大好物です。しかし、そのおでんも最近の物価高の影響を大きく受けているという話題です。背景には色々な事情があるのですが、「おでんの鍋は近年のインフレの縮図」と言われると、ちょっと悲しいですね。

2025年1月21日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

おでんは最も人気が高い鍋物だ。水産練り物大手の紀文食品の調査によると、昨シーズン(2023年9月~24年2月)に食べた鍋料理で最も多かったのはおでんで、58.9%の人が食べたと答えた。2位がキムチ鍋、3位がすき焼きだった。紀文食品は毎年、どんな鍋料理を食べたかを調査しているが、26年連続でおでんが1位だという。冬の国民食といっても良い料理だ。”

世界的なインフレが押し寄せる中、人気の具材は5年で1~4割ほど値上がりした。背景の一つは気候変動だ。おでんに欠かせない具材として真っ先に挙がるのが大根だ。総務省がまとめた直近2024年11月の消費者物価指数によると、価格は5年間で43.5%上昇した。農林水産省の調査でも今年1月6~8日の小売価格は1キログラムあたり283円で、平年に比べ1.7倍強の価格で推移する。値上がりの要因は温暖化による天候不順にある。生育期間である8~12月は夏を中心に気温が高く、さらに雨も少なかったことで生育が十分進まず、十分な供給量が確保できていない。「大根は太くてきれいなものを使うようにしているため、値上がりは痛い」。大正時代に創業した老舗「お多幸本店」(東京・中央)店長の宮嶋剛さんは話す。味だけではなく見た目も良い大根を仕入れるため、どうしてもコストがかかるという。”

“おでんに欠かせないちくわやさつま揚げなど練り製品も値上げが相次いでいる。大手メーカーの紀文食品や一正蒲鉾は新型コロナウイルス禍以降、複数回にわたり値上げを発表した。この背景には世界的な資源価格の上昇と円安がある。原料となるたらの冷凍すり身は米国など海外から輸入する。輸入価格は2015~21年には1キロあたり300~400円台で推移していたが、2022年から上昇し、一時500円を超えた。その後はやや落ち着いたが、2024年に入り再び上昇傾向にある。原油高や人件費の上昇で魚をとるコストは上がっている。各国で乱獲を防ぎ、資源管理に軸足を置いた持続可能な漁業を目指す動きもある。このため魚の供給量は増えにくい。欧米で健康志向から魚の需要が増えているのも価格の押し上げ要因だ。紀文食品は機械導入などで省人化を進め、包装方式の変更などを実施し価格の抑制に努めているという。それでもコスト高を全て吸収することはできず、値上げを余儀なくされている。”

おでんに関するデータ

“冬の食卓を揺るがすもう一つの要因がウイルスだ。JA全農たまご(東京・新宿)によると2024年12月の相場価格は1キログラムあたり290円で2020年同月に比べ6割ほど高い。農畜産業振興機構(東京・港)は近年の価格上昇の背景として鳥インフルエンザの影響を懸念している。今冬も全国各地で鳥インフルエンザが発生しており、養鶏場のニワトリを殺処分する事例も相次ぐ。飼育コストの上昇も相まって、価格上昇のリスクは今後もくすぶる。”

外国人にもおでんは人気だという。「中国や韓国、米国などから食べに来る人が増えている」とお多幸本店の宮嶋氏は話す。訪日客が最多となる中、冬の日本の味覚は旅の楽しみの一つになる。おでんの鍋は近年のインフレの縮図と言える。価格が上がっても根強い人気を保つのは、訪日客に通用するほどの魅力がおでんにはあるからかもしれない。”

レジの横に置かれた温かいおでんはコンビニエンスストアで買う総菜の代名詞だった。近年は店舗での販売は縮小傾向にある。ローソンによると、店内キッチンの調理を強化する一方、店頭でおでんを売る店は減少しているという。新型コロナウイルス禍を経て消費者の衛生意識が高まり、鍋から取ってもらう販売形式が敬遠されているという。コンビニ各社はパックされたおでんの販売に力を入れている。カップに複数具材を入れた商品も登場している。総務省の消費者物価指数は2020年から「袋入りおでん」を調査対象に加えた。2024年11月の価格を2020年同月と比べると33.8%上昇した。特に2023年後半に大きく値上がりしており、その後も高い水準が続いている。”

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