三陽商会:バーバリー後5年、再生策は?
アパレル業界の苦戦が続いています。百貨店販路を中心としてきた三陽商会も例外ではありません。思い切った事業の再構築が求められています。ファッションですから、ある程度の余裕や、遊び心は必要だと思いますが、このところの厳しい経営環境に、新型コロナウイルス感染症がさらなる打撃を与えています。不採算店舗の撤退や、ブランド構成の見直しを進め、老舗アパレルが復活することを期待しています。また一日も早く、私たちがファッションを楽しめる日常が戻ってくることを願っています。
2020年5月26日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
“三陽商会は、英ブランド「バーバリー」を失ってまもなく5年が経過するが、穴埋めはかなわず業績はふるわない。さらに新型コロナウイルス感染症の影響も襲い掛かった。定時株主総会(5月26日)では、三陽商会に約6%出資する米投資ファンドのRMBキャピタルが株主提案をしている。会社提案より大規模な店舗閉鎖や赤字ブランドからの早期撤退も求めている。三陽商会に約8%出資する八木通商や約9%出資する三井物産などの取引先は会社提案に賛同する公算が大きい。”
“2月末と比べた株価の下落率は32%安で、同業のアダストリア(3%安)などより下げがきつい。バーバリーとのライセンス契約が終了した2015年6月末と比べると4分の1程度の水準に沈む。この5年間で業績が落ち込んだ三陽商会を、独自で立て直すのはハードルが高いとの見方がある。”
“再生の成否を握るのは、大江伸治副社長だ。三井物産出身で、スポーツ衣料大手のゴールドウィンの再建に手腕を発揮した実績を持つ。今年3月に副社長として招かれた。大江氏は業績低迷の原因を「バーバリーの穴埋めをしなければと焦り過ぎた」と分析する。一時は売上高の半分程度を占めていたバーバリー関連の販売を補おうと、20~30代向け「キャスト」やセレクト店「ラブレス」などの展開を広げるも、ことごとく赤字。拡大を急いだことが裏目に出た。”
“バーバリーでの成功体験を引きずって、実力に見合わない過大計画を立てていたことも要因だ(大江氏)。人気で劣る他ブランドでも強気の仕入れをし、売り切れずに在庫が積み上がった。売り上げの7割の販路を百貨店に頼っていたことも足かせだった。商習慣上、百貨店内の店舗は欠品が許されない(大江氏)といい、さばききれない在庫を抱えてしまう構造にあった。2020年2月期の棚卸資産回転率は4.1回と、2014年12月期(5.4回)から悪化。在庫処理のための値引きが利益を圧迫し、売上高総利益は2ポイント低下した。”
“複数回の人員削減を実施したが、売上の急減で販管費比率が上昇。2016年12月期以降は営業キャッシュフローはマイナスとなることが多く、現預金や投資有価証券などバーバリー時代に築いた資産を取り崩して補ってきた。資産にはまだ余裕があり、40億円の追加融資も受けるなど、新型コロナウイルス感染症の影響下でも当面の資金繰りに問題はないが、このままではじり貧だ(大江氏)と認めている。”
“大江氏は、売上高総利益率の改善や販管費の削減に取り組む。原価削減では、甘い経費管理にメスを入れ、予算から逆算して調達する素材を決める方式に変える。仕入れは各店舗から本部主導に切り替え、無駄な発注も無くす。販管費は2年間で40億円減らす。圧縮では地方百貨店に出店する年商1000万円規模の赤字店舗など約150店を閉鎖。販売手数料などの支払いを圧縮する。”
“新型コロナウイルス感染症の影響下で競争環境は厳しさを増している。4月の販売実績は前年同月と比べ8割減った。緊急事態宣言の解除で店舗営業は徐々に再開していくものの、EC比率は1割程度と高くないため、感染症が収束しても反転攻勢に出られるかは疑問だとの声もある。”