号外:熱波で資源高騰、天然ガス・鉛・菜種など、インフレ拍車も!
これも地球温暖化の影響です。地球温暖化→気候変動→異常気象→資源価格高騰→インフレ圧力懸念。環境と経済、そして私たちの生活は密接に関係しています。直接関係ないと思えるようなことが、間接的に大きな要因になっていることがあります。日々の生活の中で次々に起こる事象に目を奪われるだけではなく、その背景で何が起きているのかに注意を払う必要があります。地球環境の悪化による気候変動の影響は、自然災害だけではありません。感染症や食料供給へのリスクも高まっていることを理解しなければなりません。
<偏西風蛇行で米欧が異常高温、日本の梅雨前線にも影響>の項を参照
2021年7月16日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
”北米を襲う熱波が資源価格を押し上げている。米国の一部地域では気温が50度を超えて冷房需要が急増し、発電に使う天然ガスの先物価格が高騰した。自動車のバッテリーに使う鉛も高温で消耗するとの思惑で3年ぶりの高値を記録。菜種といった農作物価格にも影響は及ぶ。頻発する異常気象が引き起こす需給ひっ迫による資源高は、世界的なインフレ圧力を一段と強めそうだ。”
”米国では7月9日に、カリフォルニア州デスバレーで54.4度と観測史上最高に迫る高温を記録。カナダ西部ブリティッシュコロンビア州のリットンも6月下旬に観測史上最高の高温に見舞われた。北半球の上空を吹く偏西風が大きく蛇行したことで、北米西部が熱波に襲われている。記録的な酷暑の影響を色濃く受けているのが、米国の天然ガス価格だ。ニューヨーク市場の先物は期近物が7月上旬に一時、100万BTU(英国熱量単位)当たり3.822ドルまで上昇。2018年12月下旬以来、約2年半ぶりの高値を記録した。2020年末と比べると5割高い。”
”米エネルギー情報局(EIA)によると、2021年4月時点の全米発電量は前年同月より6%増加。新型コロナウイルス禍から経済正常化が進み、電力需要が回復していたところに、熱波による冷房需要の急増も重なっている。米国の発電量の4割は天然ガス火力発電で、想定外の需要急増を受けて電力会社からの引き合いが強まっている。”
”酷暑は自動車の冷房需要を増やし、車載電池の主要素材である鉛の価格も押し上げている。ロンドン金属取引所(LME)の3か月先物価格は終値ベースで7月12日に1トン2332.50ドルと2018年7月以来の高値を付け、足元でも同値圏で推移する。自動車の運転時に冷房をフル稼働させると車載バッテリーの消耗が激しくなり、バッテリーの取り換え需要が増えて鉛需要も拡大すると予想される。どの程度の需要が発生しているかは不明だが、足元の需給動向を反映するLMEの指定倉庫在庫は約6万8千トンと今年3月の12万5千トンからほぼ半減し、約1年ぶりの低水準だ。”
”熱波による農作物の生育への影響も懸念されている。食用油の原料である菜種の世界最大輸出国のカナダにも熱波が襲う。国際指標である同国のウィニペグの菜種先物(期近)の7月15日終値は1トン912.1カナダドルと昨年末比で4割強も高い水準にある。近年の同国の菜種生産量は年間2千万トン前後だが、西部の主産地を熱波が襲い、今秋から収穫が始まる2021年産は1800万トンを割り込むとの観測がある。カナダ政府は高温によるトラブルを避けるため一日の気温が30度を超えたら、菜種などを輸送する鉄道の運行速度を制限する措置を10月末まで実施する方針。輸送効率の低下も懸念されている。“
”今回の北米の熱波に代表されるように、各地で起こる異常気象は猛威を振るっている。インドネシアで豪雨が発生し、炭鉱の操業が低下し石炭価格を押し上げる一因となった。ブラジルやアルゼンチンでは今年に入って乾燥が深刻で、大豆など穀物の相場上昇の一因になっている。一つ一つの事象は短期で終わったとしても、地球温暖化が異常気象を引き起こすリスクには長期間さらされ続ける。脱炭素の実現には時間がかかるためだ。世界的に異常気象が起こりやすくなっており、資源の価格変動リスクも高まっている。熱波や豪雨による供給障害が資源高を誘発すれば、企業のコスト増や食料価格上昇につながりかねない。”
先週は、欧州のドイツ西部とベルギーで、豪雨のため大規模な河川の氾濫が発生し、大きな被害が出ています。昨日(7月18日)の北海道足寄町の最高気温は37.5度を観測し、観測史上最高を更新しました。今年も日本各地で集中豪雨による水害が発生していることは、みなさんもご存知の通りです。地球温暖化による異常気象、そして異常気象が引き起こす災害、経済や日常生活への悪影響のリスクは、私たちの非常に身近なところにあります。