緊急:米国頼みに綻び、「自力対応」を迫られる日本の安全保障

日本の安全保障政策は、米国との同盟関係が機軸となっています。アフガニスタンでタリバンが首都カブールを制圧し、現政権が事実上崩壊したこと。また混乱が続くアフガニスタンから8月末までに米軍が撤収する計画であることが、日本の安全保障の脆弱性を顕在化させることになりました。自国および自国民の安全は、自力で確保しなければならないという「当たり前のこと」をもう一度考えてみることが必要です。

2021年8月20日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

”アフガニスタンの首都カブールが陥落して一夜明けた8月16日、カブール国際空港には各国軍機の姿があった。米英のほかドイツ、イタリアなどが自国民やアフガニスタン人を避難させるため送り込んだ。各国メディアによると自前の航空機を飛ばさなかったのは主要7ヶ国(G7)で日本だけだった。

「大使館員12名は友好国の軍用機によりドバイに退避した」。日本外務省は17日、カブールからの脱出を発表した。支援要請した国のうち最も早く出発した英国軍機に乗った。「友好国」と名前を伏せたのは要請が殺到する事態を避けるため。それだけ緊迫した状況だった。”

”「大使館員の退避を視野に検討するように」。茂木敏充外相は12日に外務省内で指示を出した。当初は自衛隊機を送る案もあった。自衛隊法は外国で騒乱が発生した場合、法人を保護・輸送できる規定がある。2016年に南スーダンへ輸送機を派遣して大使館員を退避させた事例がある。事態が急変した今回は安全性の検討や与党への根回しなどにかかる時間が問題となった。外務省幹部は「手続きに1週間かかりかねず、迅速に退避できる確実な方法を選んだ」と明かす。15日に派遣を決めたドイツなどと比べ機動性を欠いた。

”アフガニスタンでタリバン政権が倒れた2001年以降、日本は米国主導の復興プロセスに加わってきた。20年間の支援総額は7000億円程度。インド洋で活動する米艦への給油も2010年まで続けた。日本は米国の存在を前提に安全保障政策を組み立ててきた。自衛隊の領土防衛も米軍が出動するまで持ちこたえることに主眼を置く。沖縄県・尖閣諸島が米国の日本防衛義務を定めた日米安保条約5条の適用対象になるかが注目されるのは象徴的だ。米国が揺らげば日本が独力で可能なことは限られる。アフガニスタンの混乱は自国民の避難もおぼつかない現実を突きつけた。

”シェール革命で原油の純輸出国となった米国は中東やアフガニスタンへの関与を弱める。中東からの原油になお9割近くを頼る日本は地域の安定に向けて従来とは異なる方法を探る必要がある。「アフガニスタンは明日の台湾だ!」。一部の中国メディアは撤退する米国の姿勢を揶揄し、中国が武力統一へ動けば台湾は自力に頼るしかないと書き立てた。米軍のアフガニスタン撤退は対中シフトの一環で、北東アジアから退くわけではない。それでも中国の軍備増強が進めば米国の影響力は相対的に低下してゆく。”

”バイデン大統領は14日の声明で「アフガニスタン軍が自国を守れない、もしくは守る意思がなければ米軍が駐留しても意味がない」と述べた。自民党内には「米軍任せだったアフガニスタンを日本に置き換えたらどうなるか」との問題提起がある。日本の安全保障政策は引き続き米国との同盟関係が機軸となる。そのうえで憲法が掲げる平和主義を守りつつ、邦人保護や領土防衛へ米国に頼らず自力でできることはなにか。米国の蹉跌(さてつ)は日本にも必要な備えを迫る。”

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