号外:過去8年が最も暖かい、パリ協定基準の1.5度上昇に迫る

残念ですが、地球温暖化は着々と進んでいることがデータで示されたという話題です。産業革命以降の世界の平均気温上昇が1.5度を超えると、異常気象による災害発生リスクが大幅に高まると指摘されています。下記のデータでは、私たちがリミットに近づいていることが示されています。どのように対処すればいいのかはわかっているのですが、様々な利害を調整しながら実行していくことは簡単ではありません。しかし手遅れになる前に、将来の世代に対する責任を果たさなければなりません。

2023年1月13日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

欧州の森林火災

2022年までの8年間が記録上最も暖かかったことが複数の研究機関の調査で分かった。大気中の温暖化ガス濃度が記録的な水準に達しているためだ。過去8年の平均気温は産業革命前の気温を1.2度上回り、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で国際社会が抑制目標とする1.5度に迫っている。気象情報を分析する欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービス(C3S)は1月9日、過去8年間は1991~2020の平均を0.3度上回り、産業革命期の1850~1900年に比べて約1.2度高かったとの分析を示した。”

“2022年単年では過去5番目に暖かい年だった。これまでに最も暑かったのは2016年。2020年、2019年、2017年が続き、猛暑の年がここ最近に集中している。世界気象機関(WMO)は、2013~2022年の平均気温が2011~2020年から0.05度上昇しており「長期的な温暖化が継続していることを示している」と説明した。大気中の温暖化ガスは過去最高を記録した。CO2の濃度は約2.1ppm(ppmは100万分の1)上昇して417ppmに、メタンは約12ppb(ppbは10億分の1)高い1894ppbとなった。観測ベースでは最高で、ほかの記録をみるとCO2は200万年以上ぶり、メタンは80万年以上ぶりの高濃度だという。

“実際、2022年は世界各地で異常気象が観測された。春にはパキスタンやインド北部、夏には中国中東部を熱波が襲った。パキスタンでは夏に洪水が発生し、多くの被災者が出た。米国でも巨大ハリケーンが多くの被害を出した。異常気象の原因のひとつとされる「ラニーニャ現象」も関連しているようだ。インドは熱波で農作物が影響を受けて、小麦の輸出禁止に踏み切った。米国でも干ばつによる河川の水量減少で野菜の価格が急騰した。欧州は史上2番目に暖かい年となった。フランス、スペイン、イタリア、英国などでは過去最高だった。極端な乾燥や雨不足から南部などで干ばつが起き、フランスとスペインでは大規模な森林火災が発生した。

“C3Sで大気の監視を担当するプッシュ・ディレクターは「大気中の温暖化ガス濃度の上昇の勢いが弱まる気配がないことは明らかだ」と、今後も気温上昇が続くとみる。「パリ協定」は産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑え、可能な限り1.5度以内に抑える目標を掲げた。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は1.5度を超えれば、異常気象などのリスクが劇的に高まると指摘する。2022年11月に開かれた第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)では1.5度目標を追求することを確認した。だが実際は1.5度に近づきつつあることがデータで示された。国連環境計画(UNEP)は現状のままでは今世紀末に気温の上昇幅が2.4~2.6度になる可能性が高いとみる。

“海面上昇で海抜の低い島国では国土が消失し、さらに極端な異常気象が増えるリスクが一段と高まる。難民などの増加で社会不安が高まる懸念もある。IPCCによると、1.5度以内の抑制に世界が排出できる温暖化ガスはCO2換算で残り4200億トンだ。現行水準の排出を10年程度続ければ達してしまう量で、排出減に向けた抜本的な対策の実行が欠かせない。

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