パタゴニア、「品質とは環境・社会問題」
アパレルのサステイナビリティについての情報を探していると、パタゴニア関連の記事が目につきます。該社CEOのライアン・ゲラート氏へのインタビューなのですが、相変わらずぶれない姿勢を表明しています。すべてのアパレルがパタゴニアのようになったら、みんなが似たような服を着るようになり、ちょっとつまらないかもしれません。しかし、アパレル産業の持続可能性を考えるときには、パタゴニアの経営方針を少しは参考にすべきではないでしょうか。もう20年ぐらい前になりますが、パタゴニア本社を訪ねたときに見かけた創業者のイヴォンは、優しそうなおじさんにしか見えなかったのですが・・・。
2024年7月2日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
“売れ残った衣料品の廃棄を禁じる法律が欧州で成立するなど、アパレル産業がもたらす環境負荷に注目が集まる。アウトドア衣料の米パタゴニアは「地球を救うためにビジネスを営む」という独自のESG(環境・社会・企業統治)経営を貫く。ライアン・ゲラートCEOに今後の業界のあり方などを聞いた。”
“創業家が持つ全株式を新設の目的信託と、非営利の社会福祉団体に寄付した。資本構造を大きく見直した理由は?”
“「2つの目標がある。環境保護に回す資金を増やすこと。そして価値観に従って会社を運営し続けることだ」「創業者のイヴォン・シュイナードはよく『パタゴニアは従来と異なる方法でビジネスをする実験だ』と話す。成長への欲望や株主利益の追求は、当社が目指すビジネスの姿と矛盾する意思決定を強いる」「成長を重視する会社ではなく、この規模に達したいとか、この速度で成長したいとか言ったことは一度もない。完璧ではないが、でき得る最高の製品をつくることに集中したい。(顧客など)コミュニティーを中心に据え、高品質なサービスを提供し、同様のことをする他者を支援する」”
“パタゴニアにとって「品質」とは何か?”
“環境問題であり、社会問題でもある。フットプリント(環境への影響)を抑えて製品をつくり、長く使えるよう考える責任だ。品質はパタゴニアのあらゆる側面を支配する哲学といえる」「すべてのアパレル企業が消費至上主義を見直し、人々に必要のないものを買わせる精神構造と思考を変える必要がある。現在のファストファッションのビジネスモデルと正反対だ」”
“パタゴニア製品は他社製品より高価とみられている。高品質なら正当化されるのか?”
“「そう思う。製造方法、製造する人に対して果たす責任、使用素材、耐久性など、すべてを考慮すれば答えはおのずと明らかになる。多くの機能を備え、長持ちする製品を買う方が、使い捨ての長持ちしない製品をいくつも買うより経済的だ」”
“アパレル業界は工場の劣悪な労働条件を批判されてきた。改善は進んでいるのか?”
“「ファストファッションの概念や規模、新たな企業の出現は多くのことが急速に間違った方向に進んでいる証拠だろう」「私たちは(公正な労働環境を整える工場などを認証する)米国の非営利組織フェアトレードUSAと協力している。認証工場の労働者にはプレミアム(上乗せした報酬)を支払う。ボーナスとして受けとてもいいし、託児所の整備などに使ってもいい」”
“あなたは化石燃料産業に資金を提供する大手銀行を問題視してきた。銀行は変わったか?”
“「彼らは一貫してお金を追いかけている。多くの銀行で環境の取り組みが後退している。パタゴニアの環境基準に合わない銀行との取引をやめる決定をしてきた」”
“米大統領選挙が近づく。環境の観点から次のリーダーにふさわしい人物をどう考えるか?”
“「米国は経済大国の一つであり、環境への影響が大きい国の一つだ。炭素集約型の過去・現在と決別し、人々の協力や資本主義の機能について新しいビジョンと、そこに至る道筋を持たなければならない。米国に限らず、世界中の国々でそのためのリーダーが必要だ」”
“社会課題の解決を目指す起業家が増えている。何を助言するか?”
“「なぜそのビジネスを始めるのか、どんな価値があるのか。旅の最初にそれを明確にしておけば、無数のむずかしい決断をするとき、進むべき道は見えてくる」