号外:シマノがAI変速自転車!

私は4月にスポーツタイプの電動アシスト自転車(E-BIKE)を購入し愛用しています。7月中旬から9月中旬まではあまりに暑かったので自転車を乗り回すことは控えていました。最近ようやく秋の気配を感じられるようになったので、サイクリングも再開です。私のE-BIKEの変速機はシマノ製なのですが、そのシマノがAIで制御する自転車の変速システムを実用化するという話題です。どんな自転車なのか、とても興味があります。

1000キロ走る電動アシスト自転車!>の項を参照

2024年9月23日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

シマノは2025年に自転車の駆動を人工知能(AI)で制御する新しい変速システムを実用化する。乗り手の運転のクセをAIが学び自動でギアチェンジする。シマノはロードバイクなど高級車の変速機で高いシェアを誇ってきた。新システムは買い物など日常使いの車種に供給する。普及が進むE-BIKE(電動アシスト自転車)に対抗して新機軸を打ち出す。

“「こんなに軽々と坂を上れるなんて。E-BIKEじゃなくてもいいと思う」。シマノの新しい変速システムを搭載した自転車の試乗会で東京・渋谷の住宅街にある坂道を上り切った40代女性が驚きの声を上げた。新変速システム「Q’AUTO(クォート)」はAIチップを搭載したハブ部品と変速機、11段ギアから構成する。シマノは200年代初頭に「マイコンで自動制御する自転車」を発売したことがある。この発想の延長線上で二十数年かけて開発したこのシステムの最大の特徴は、ハブ部品のAIが頭脳となり自転車を操作する点だ。”

ギアチェンジの仕組み

“自転車の運転ではペダルをこぐ際のテンポや変速のタイミングなど乗り手によって個人差がある。ハブ部品のAIはあらかじめ試乗データを基に自転車の乗り方の多様なパターンを記憶している。さらに実際の乗り手の運転のくせを学習することで自転車の速度や傾きから適切なギアチェンジのタイミングを自動で判断し、変速機を作動させる。日常の通勤や通学、買い物に使う自転車では、電動モーターの補助でペダルをこぐ負荷が小さくなるE-BIKEの人気が高まっている。クォート搭載車も適切なタイミングで自動変速することで快適に運転できる。リチウムイオン電池を搭載しないため車体も軽くなる。ギアチェンジを気にせずブレーキ操作に専念でき安全運転にもつながる。ハブ部品が車輪の駆動で発充電し、連結するする変速機を動かすため、複雑な配線は必要ない。シマノはクォートを主にE-BIKE市場のボリュームゾーンである日常使いの一般車向けに投入する計画だ。ペダルやブレーキなどと組み合わせて欧米や台湾などの自転車メーカーに供給し、2025年内にもクォートを搭載した新車が市場に出てくる。

“同社は新型コロナウイルス禍の世界的なサイクリングブームで業績を伸ばしたが、2023年12月期は連結売上高が前の期比25%減の4743億円、純利益も611億円と半減した。ブームの一服でサプライチェーン(供給網)上に単価の高い高機能部品が大量に滞留した。在庫調整のために主力の堺工場(堺市)の稼働も落とさざるを得なくなった。こうした状況を島野容三会長兼最高経営責任者(CEO)は「堺の生産のあり方を見直す好機」と捉えた。堺工場では稼働の低下を受けてクォートなど次世代製品の量産に向けた準備に時間を割く余裕ができた。地元の中小メーカーなどとは次世代製品向けのパーツ供給に向けた協議も進めている。島野会長は「日本のものづくりの英知を結集し、あっと驚く新製品を生み出していく」と意気込む。”

“シマノは1921年の創業間もなくして自転車の基幹となる駆動輪「フリーホイール」の生産を始めた。1973年にロードバイクなど高級自転車向けにブレーキや変速機などを一体化した「コンポーネント」の販売を開始。操作性の高さで欧米のトップレーサーが採用して知名度を高めた。1982年には世界に先駆けてマウンテンバイク(MTB)用コンポーネントを製品化し、市場を席巻した。こうした高級車向けコンポーネントの世界シェアは7割に達する。メカ機構の高い技術力を生かして1970年からはリールなど釣り具用品にも事業領域を広げてきた。

ただ急速に普及するE-BIKE向けには苦戦が続く。心臓部の電動ユニットでは独ボッシュがトップを走り、中国や台湾の新興メーカーも台頭している。国内でもパナソニックホールディングス、ヤマハ発動機などの完成車メーカーがおり、シマノの存在感は薄い。「E-BIKEではボッシュの牙城は崩せない」。開発担当の豊嶋敬副社長はこう語るが「軽い走りと運転のしやすさならば、クォート搭載車にも勝機がある」とみる。”

クォート搭載車の価格は20万円弱となる見込み。量産化による価格引き下げも期待でき、15万円超の車種も珍しくないE-BIKEにも十分対抗できる。調査会社によると世界の自転車市場は脱炭素の流れもあり、2020年から27年にかけて年7%ほど伸びる見込みだ。この成長を日常使いのE-BIKEがけん引するとみられる。シマノはE-BIKEに対抗する新機軸で市場の成長のパイを奪う考えだ。ロードバイクの変速機などで技術の先進性を示し、自転車業界でトップブランドに上り詰めたシマノ。再び自転車文化に革命を起こしてE-BIKEの牙城を崩せるか、日本のものづくりの進化も問われる賭けに出たともいえそうだ。”

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