号外:気候変動の原因は人間の活動である!

2020年3月31日付け日経ビジネス電子版に掲載された松本哲人氏:国際通貨基金(IMF)調査局シニアエコノミストのコラム「気候変動の経済学」より、

“地球の温暖化に関して、一部の政治家やメディアには否定的な見方をしている向きもある。だが、科学者が97%以上の気候変動に関する査読論文を精査したところ、過去1世紀にわたる地球温暖化は人間の活動によるものだというコンセンサスが形成されている。”

気候変動のもっとも大きな要因がCO2排出量の増加であることも、科学者の間でほぼ異論はない。一部の気候温暖化懐疑派の論者は、過去数年のCO2排出量の変化と気温の関係を挙げて相関関係の弱さを主張するが、実際に現人類の生誕(20万年前)以前からの長期にわたるCO2濃度と気温変化の関係を見ると、その強い相関が見て取れる。気候変動の実態に関しては「気候変動に関する政府間パネル」などの情報を見ていただくと、そのデータの確実性や、科学者の間に見解の相違がある点について明快に書かれている。

歴史的CO2濃度と気温の相関関係

気候変動に関する政府間パネル(IPCC):人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、化学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された組織。

気候変動の影響には世代間格差、所得格差、地域格差があり、そのため、政治的にも敏感な問題となっている。前述のようにほぼ全ての科学者が認めている気候変動を否定するのは、実際には影響を認めているものの政治的・経済的な理由により表面的に否定している人々と、そうした人々に騙されてしまう「純粋」な人々であるといえる。”

“日本では反原発論者の一部がCO2排出のない原発の利点を矮小化するために、地球温暖化を否定するような状況もうかがわれる。原子力発電による危険性と地球温暖化の危険性を考慮し、どのようなバランスを取るかについては科学的な議論を超えた政治的な判断となり得る。だが、温暖化を否定したり、矮小化したりするのは科学者としての道徳に反する行動といえよう。地球温暖化はあくまでも人間の活動によるCO2排出量の増加によるものであるということを、認識していただきたい。

気候変動は人間の活動によるCO2排出量の増加によるものです。地球温暖化に懐疑的で、パリ協定からの離脱を表明した某国の大統領のような人もいますが、世界中の多くの科学者が、人の活動によって温暖化が進み、直ちに対策(CO2排出量の削減)をとらなければ、地球環境は危機的状況に陥ると警告しています。しかし世界各国の足並みは揃いません。自国の経済政策(短期的な課題)を優先する政治的な理由で、地球温暖化(今後長期間にわたって人類を脅かす可能性が高い課題)対策に消極的な、少なくとも積極的に踏み込めない国や地域が多くあります。残念ながら、わが国、日本もそのような国の1つのようです。

IPCCの報告では、「過去の排出により大気中に蓄積している温室効果ガス(主としてCO2、メタン、亜酸化窒素等)の影響により、排出を直ちに止めたとしても、気温は数世紀にわたって高止まりする」としています。今後数十年間に起きる気候変動は、既に大気中に放出された温室効果ガスの濃度に大きく左右されるため、今後の排出抑制は短期的にはほとんど影響を与えません。しかし、今後の排出状況は21世紀半ば以降の気候変動に大きく影響します。温室効果ガスの排出を直ちに、大幅に、かつ持続的に削減しなければ、将来の世代は非常に不安定な地球環境で生活することになります。言うまでもなく、対策が遅れれば、その分だけ状況は悪化します。

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