欧州委員会、循環経済行動計画を発表

2020年3月19日 日本化学繊維協会HPより、

“3月11日、欧州委員会は「EU Circular Economy Action Plan」(循環経済に関する行動計画)を発表した。昨年12月に発表された「欧州グリーンディール計画」の中核との位置づけである。欧州委員会は、現状の「使い捨て社会」は持続可能ではないと認識し、地球温暖化ガスの半分は資源の採取や加工の過程で排出されることなどを踏まえ、2050年までにEU域内の排出を実質ゼロにすることを目指す。

“本行動計画では、分野ごとのアクションプランについても記されており、「繊維」分野においては、一次原料と水の使用量において、食糧、住宅、輸送に次ぐ第4位、地球温暖化ガス(GHG)排出量では第5位であること、世界では使用済み繊維製品が新製品にリサイクルされるのは1%未満と推定されていること、EUの繊維産業は中小企業が大多数であり、EUの衣料品市場額の60%は輸入であること、などの現状認識が示されている。”

“そのうえで、

①繊維製品が循環性に適合するためのエコデザインを決定すること、

化学物質管理の仕組みの整備、

消費者がサステイナブルな繊維製品を選択しやすくすること・リユースや修理を利用しやすくすること、

循環型繊維製品開発のための事業環境の改善、

⑤2025年までに高レベルの分別収集を達成するためのガイダンス提供、

⑥イノベーションを含めた繊維製品の3Rの促進

拡大生産者責任のような規制措置を奨励すること、

などが触れられている。欧州委員会は、詳細を詰めた上で法案をまとめ、2020年以降、加盟国と欧州議会の承認を得て実行に移す方向である。

2020年3月27日付け繊研新聞電子版に掲載された記事より、

欧州繊維産業連盟(EURATEX)は、欧州委員会が発表した「EU Circular Economy Action Plan」(循環経済に関する行動計画)について歓迎する意向を示した。EURATEXは「実行可能で持続可能なソリューションを含む包括的な戦略を既に策定している」と独自の活動をアピールするとともに、「循環経済をより効率的に実現させるためにEUのイニシアティブに期待する」とコメントした。”

“そのうえで、EURATEXは、「繊維製品を再利用する市場を創る必要がある」と強調。今後、循環経済行動計画の推進に向けたポイントを挙げた。

a) 欧州の繊維・アパレル業界の99%が中小企業であり、「環境に配慮した高付加価値の製品やソリューションを開発するにあたって資金が不足している」ことなどを考慮し、「中小企業の負担が大きくならない法的枠組みが必要」である。

b) 使用済みの衣類や繊維製品のリサイクル事業を行う企業が最適な循環プロセスを構築しやすいよう「市場の近隣にリサイクル施設を持つべき」と提案。

c) 「グリーン公共調達を増やすこと」とし、EU当局に対して「高品質、高耐久の製品、環境負荷の少ない製品、再利用可能または生分解性素材で生産された製品を優先して調達することが企業の循環型投資を増やすことになる」と指摘。“

欧州委員会は、昨年12月に発表した「欧州グリーンディール計画」の実行に着手しました。行動計画として「EU Circular Economy Action Plan」(循環経済に関する行動計画)が3月11日に発表され、その中で、「繊維」分野での現状認識が示され、今後のアクションプランについて触れています。現時点では枠組みを示すにとどまり、今後詳細を詰めて法案化していく模様です。これに対して、業界団体であるEURATEXが反応、コメントしています。強調されたことは「繊維製品を再利用する市場を創る必要がある」ということです。非常に的を得た指摘だと思います。このHPでも触れているように、繊維製品のリサイクルは色々な制約があって簡単なことではありません。特に現実的で実現可能な「出口」(再利用する市場)をしっかり想定しておく必要があります。この「出口」にしたがって、求められるリサイクル技術、ルート、再生資源の品質、経済性が異なってくるからです。「出口」がなければ、リサイクルしても意味がありません。

「欧州グリーンディール計画」が順調に実行され、循環型経済社会が実現し、地球環境問題が解決されることを期待しています。ともかくEUでは行動が開始されています。欧州委員会がコンセプトを作成し、それをベースに業界団体が意見表明し、今後詳細が議論されてゆきます。「欧州グリーンディール計画」は、環境問題を契機として、産業構造を改革し、産業競争力を強化することを目的にしています。環境問題を解決してゆくことは必要なことですが、そこに経済改革も組み込んで、したたかに成長戦略としています。日本や、他の地域ではどうでしょうか。気候変動に関する認識の不足、リーダーシップの欠如、まとまりを欠く個々の業界対応、このままでは大きく欧州の後塵を拝すことになることが懸念されます。

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