古着ブームの裏側に高まる若者の環境意識? ②
”特別に意識の高い人たちだけでなく、一般的な若者の意識も変わり始めている。それにはグレタさんやSDGsの動きなども影響している。いまの大学生以下の世代は、学校で普通にSDGsの授業を受けている。昔はそんな基礎教育は受けていなかった。子供のころからSDGsの教育を受けて、普通に意識として根付いているようだ。”
”なぜ若い人の行動だけが変わって、「おじさん世代」の行動は変わらないのか?学生時代にそのような教育は受けていなくても、同じ情報にはアクセスできているはずなのに。社会人はすでに資本主義の中の経済活動に慣れてしまっている。その点、これから社会に出る人たちはまだ染まり切っていないので、「自分が働くとしたら?」「着るとしたら?」とういうことに、意識が結びつきやすいのかもしれない。”
”このような変化があって、サステイナブル、エシカルを意識しないブランドは選ばれなくなっていく。とはいえ、3つの論点が複雑に絡み合っているので、全部やろうとすると中途半端に映ってしまう。事業者は、完璧を目指そうとすると無理が出る。3つの論点のどれにフォーカスするのかを見定めていくべきだろう。”
”うまくいっているブランドで言えば、例えばアメリカの「Everlane」は、3つのうちのフェアトレードにコミットしている。原価を開示することで、適正な賃金で生産していること、結果として自社の利益はこれぐらいであるというような情報を発信している。「Allbirds」という会社は環境だ。100%リサイクル可能な素材を使って靴を作っている。色々な素材が混ざっていて再利用が難しいと言われるスニーカーを再利用可能な状態にすることで、ファンの獲得に成功している。”
”エシカル、サステイナブルの文脈で目立っている会社は、ごちゃごちゃになっている論点を分解し、自分たちがフォーカスすべきところを見定めているように見える。そこでフェアトレードから環境からなんでもやろうとすると、わかりにくくなるし、伝わりにくくなる。”
”「古着」がフォーカスしているのは大量生産大量廃棄の部分。結局、ここがどん詰まっていることがあらゆる問題の根源になっているように思われる。究極的にサステイナブルなモデルとして、日本の「ボロ」という文化がある。着物をつぎはぎして着続けるというものだ。つまり、究極的にエコとかサステイナブルであるにはまず、ずっと着られて、捨てられないことが大切だ。”
”先ほどの3つの論点で言えば、フェアトレード的なところと環境的なところは、小規模にやれることが極めて限定的だ。サステイナブルな糸や生地を使いたいと思っても、綿農家さんや生地屋さんを支えるためには何百トンというロットで作らなければならない。小さな経済規模ではまず無理な話だ。一方でアディダスの「フューチャークラフト」やナイキの「スペースヒッピー」など、経済規模の大きなプレーヤーがサステイナブルな物作りに取り組んでいる。彼らの活動全部がエシカルでサステイナブルというわけではないが、彼らは彼らで、自分たちのコミットできる範囲で責任を全うしようとしている。自分の責任領域を見定めて、そこでちゃんと責任を果たしていくことが大切だ。色んな領域、色んな部分でそれぞれがそのように考えて動き出すことで、いいサイクルが回っていくと思われる。”
”結局、エシカル、サステイナブルの文脈にはたくさんの論点があるので、揚げ足を取ろうと思えばいくらでも取れてしまう。それよりは「何にフォーカスしているか」という視点で見た方が建設的だ。「買いたい服がない」「環境にいいものだけを着たい。けど、それができない」と悩むのではなく、消費者の側も、少しフレキシブルに対応すれば良いのではないか。エシカル、サステイナブルといったテーマには暴力的なまでの「正しさ」がある。その「正しさ」を振りかざすようなコミュニケーションをしてしまうと、どうしても行き詰ってしまう。結果として、社会はなかなかいい方向に進んでいかない。全部が全部完璧なわけではないが、「たくさんある論点の中で、このブランドは何にフォーカスしているのか」「自分が大切に思う価値観と一致しているのはどこのブランドか」というような観点で、服を選べばいいのではないだろうか。”
”買い物には投票とか投資の側面がある。「いいところに目を向けていて、いまは不完全だけど見どころがあるから、自分が買うことで育ててやるか」というような考え方があってもいいではないか。買う人の要求が高くなればなるほど、社会はどんどん良くなっていく。その意味では、古着を買っている若い人は先進的だ。エシカルやサステイナブルといったテーマに対して答えを出していく、出せる人が現状はまだまだ足りないので、「だったら古着でいいや」となっているだけだ。これらのテーマに対して自信を持ってオファーできる人たちが出てくれば「新品も悪くないよね」という話になるだろう。そういうブランドが長く続くように、自分たちが票を集めようという感覚を消費者一人ひとりが持つことが大切だ。”