号外:国際エネルギー機関(IEA)の「世界エネルギー見通し」
今年8月に発表されたIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の報告書では、これまでの予測よりも10年早い2021-2040年に世界の平均気温上昇が産業革命前から1.5度以上に達するという新たな予測が出されました。日本は2050年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにすることを宣言し、今年4月には、2030年までに2013年度比で46%の削減する目標が示されました。実現のためには、産業構造を脱炭素に向けて大きく転換していかねばなりません。再生可能エネルギーの導入拡大はもちろんですが、CO2を発生させない原子力発電の取り扱いについてもきちんと議論して方針を決定し、施策を実施しなくてはなりません。国際エネルギー機関(IEA)は10月13日、2050年に世界の温暖化ガス排出を実質ゼロにするためのシナリオを分析し、「世界エネルギー見通し」を発表しました。現状の各国の施策では目標の実現には程遠く、各国に取り組みを強化するように求めています。
2021年10月13日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
”2050年に温暖化ガスの排出量を実質ゼロにするためには、エネルギー源としての石炭は2030年に2020年の半分程度、2050年には約1割に減らす必要がある。残る石炭施設も燃焼する際に排出されるCO2を回収し、大気に放出させない取り組みが求められる。石油は2030年に2割減り、2050年に4分の1になる。比較的排出量が少ない天然ガスは2030年には1割弱減る程度だが、2050年には半分弱になる。天然ガスも大部分でCO2の回収装置を付ける必要がある。“
“一方で、最大のエネルギー供給源となるのは再生可能エネルギーだ。2050年時点では67%を占め、太陽光は20倍強、風力は15倍になる。運転中は排出のない原子力は2倍になり、エネルギー供給の11%を占める。”
“日米欧など先進国は、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づいて、地球の気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑えるよう、排出削減目標を相次ぎ発表している。IEAの分析では現状の施策だけでは2100年時点の気温は2.6度上昇する。日米欧などが2050年までに実質ゼロにするといった公表済みの目標を達成しても2.1度上昇するという。IEAはクリーンエネルギーの導入は「あまりに遅い」と警告し、各国に対策を強化するように促した。”
“今回の「見通し」の最大の特徴は、大胆な再生可能エネルギーへのシフトがもたらす経済メリットの強調だ。もっとも厳しい2050年実質排出ゼロのシナリオの下で風力発電、太陽光発電、リチウムイオン電池、水電解装置、燃料電池などから構成される「New Energy Economy」の市場規模が、2050年までに現在の約10倍に拡大する。化石燃料部門の雇用は大幅に減るが、再生可能エネルギー、電気自動車、電力系統、省エネルギーなどの部門がそれをはるかに上回る大幅な雇用増をもたらすとしている。雇用の大規模なシフトを円滑に進める政府の役割も強調されている。かつて保守的だったIEAが、非常に大胆な転換を推奨している。”