供給網から強制労働を排除、G7貿易相会合
中国の新疆ウイグル地区で生産される綿花や、それに連なる繊維産業、また太陽光パネルなどの製品の製造で、少数民族が強制労働させられている懸念があります。中国当局は強制労働を否定し内政干渉だと反発していますが、G7は貿易相会合で、中国を名指しすることは避けていますが、国際的なサプライチェーンから強制労働を排除することを合意しました。この合意をきっかけに、国内でもサプライチェーンにおける人権侵害について議論を深め、今後の対応指針を定めなければなりません。
2021年10月23日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
”主要7ヶ国(G7)は10月22日に開いた貿易相会合で、国際的なサプライチェーンから強制労働を排除する仕組みづくりで一致した。強制労働の排除へG7が具体的な対応の方向性を打ち出すのは今回が初めて。採択した共同声明で名指しは避けたが、新疆ウイグル自治区で疑われる中国当局による人権抑圧を念頭におく。共同声明では、輸出入の制限措置など各国の貿易政策が、強制労働を防ぐうえで「重要な手段」になると明記した。少数民族などを念頭に「脆弱なグループ」が国家から強制労働を迫られる問題への懸念を共有した。”
”輸出入制限などの貿易措置を活用したり、企業がサプライチェーン上の人権侵害リスクを把握し予防する「人権デューデリジェンス(DD)」を後押ししたりするなどして、強制労働の排除をめざす姿勢を打ち出した。企業が人権リスクにどの程度対応すればいいか明確化する方針でも一致した。企業がどんな証拠やデータを提示すれば強制労働に関わっていないと証明できるか明示して予見可能性を高める。”
*デューデリジェンス:投資を行うにあたって、投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを調査すること。
”会合はロンドンでの対面とオンライン形式を組み合わせて開いた。日本からは萩生田光一経済産業相がオンラインで参加。会合後、萩生田氏は記者団にG7合意を受けて「省内横断で政策検討を加速すべく、大臣官房に新たなチームを発足させる」と述べた。”
”強制労働を巡っては米国がウイグルでの強制労働の関与が疑われる衣料品などの輸入禁止措置を講じている。日本は人権に特化した輸出入管理の法令や規則がない。人権DDも制度化されておらず、企業の対応が遅れれば世界的なサプライチェーンから外されるリスクが高まる。G7合意を受け、日本も制度導入に向けた議論が活発化する可能性がある。”