古着が定着、輸入量最高に

若者の間で古着が定着してきているという話題です。製品のライフサイクルをしっかり使い切るというような話ではなく(その意味合いもありますが)、ひとつの「ファッション」として共感を得ているようです。持続可能性というような硬い言葉で考えるより、ファッションとして気楽に楽しむことで、幅広く世の中に受け入れられるようです。これも衣料品という製品の特徴かもしれません。

2022年4月2日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

古着の人気が止まらない。矢野経済研究所によると、国内のファッションアイテムの中古市場の規模は2021年は9000億円(予測)で、この数年は毎年10%程度の拡大を続けている。海外からの輸入も増えており、2021年の輸入量は8701トンと統計を遡れる1988年以降で過去最高となった。人気なのは運動着として着用されていたようなスポーツテイストの衣料で、1990年代のスウェットの中には、5年前の2倍以上の価格に跳ね上がっているものもある。”

”「(新品では)なかなかない古着ならではのデザインに出会える。ショップをまわって探す時間も楽しい」。この数年、原宿や下北沢、高円寺などで古着ショップ巡りをしている大学生の男性(20)は話す。古着人気の理由のひとつは、若者を中心に「90年代ファッション」が再燃しているためだ。「当時の流行だったカジュアルでスポーツテイストのものが好調」と輸入古着を豊富に扱う、古着屋JAM原宿店(東京・渋谷)の店長は話す。全国に19店の古着ショップを運営するJAMトレーディング(大阪市)が運営しており、同店は関東初の店舗として、2021年に開店した。”

輸入古着、今の人気は?

特に注目されているのがスポーツブランドのスウェットやナイロンジャケットだ。例えば、独自の縮みにくい製法で作られるチャンピオン「リバースウィーブ」シリーズのスウェットトレーナーに関しては、5年前は5000円程度だった「90年代もの」が、現在は平均価格が1万2000円まで上がっているという。記者が訪れた3月中旬には、1万6000円を超えるものもあった。より安価で販売されている同じようなアイテムの新作もあるが、腕周りの太さが微妙に違ったり、色あせも含めた独特の雰囲気があるという。製造している場所が年代によって異なるのも、探す楽しみにつながっている。90年代の人々が着ていたように、大きめにだぼっと着るのが今どきで、サイズが大きい方が需要が高く、その分価格も高い。

”「無地よりもプリントものを探している人が多い」。こう話すのは、輸入古着ショップ「デザートスノー」を展開するデザートスノー(東京・渋谷)の鈴木道雄社長だ。今や周辺に180店近くの古着ショップがあるとされる古着の聖地、東京・下北沢でも6店を展開する。インスタグラムなどSNSの投稿が当たり前になり、「自撮りが増え、『かぶらない、個性が表現できる』と古着が選ばれている」と鈴木社長はみる。かつては古着は安価ゆえに購入されていた面があり、2000年代後半には「ZARA(ザラ)や「H&M」などの低価格のファストファッションの勢いにおされた。もちろん古着はどれも一点物。ここにきて画一的なファッションへの飽きも募っていたのだろう。“

“デザートスノーでは、米ブランドの「トミーヒルフィガー」や「ノーティカ」などの色使いが豊富なジャケットが売れている。「ロゴもの」も人気で、「カルバン・クライン」や「DKNY」などが、今の20歳前後の人にとっては新しいものとして捉えられているという。米国の大学のロゴ入りのスウェットも人気アイテムのひとつだ。東京・原宿の古着ショップ「ベルベルジン」の藤原裕ディレクターによると、中でも特に価格が上がっているのがイエール大学だそう。なぜハーバードよりイエールなのか。米国の大学にはそれぞれスクールカラーがあり、ハーバードは紫がかった赤、イエールは濃いブルー。「えんじより、紺なのでしょう」と藤原さん。何が当たるか分からないのも古着ならではの楽しみだ。”

過去を遡ると、1990年代にも古着ブームがあったが、当時との違いは裾野の広がりだ。90年代は、男性を中心に、より古くて希少性の高いアイテムに人気が集中したが、今はデザインと質を気に入れば手に取ってもらえるようになった。男女ともに人気があり、古着屋JAMの客層は男性が55%、女性が45%だ。

古着輸入量増加推移

”楽しむ世代も広がっており、デザートスノーのイオンレイクタウン店(埼玉県越谷市)の店舗の購入層の2割は50~60代だという。4~5年前に始まった現在の盛り上がりは2020~21年には落ち着くと思われていたが、現在も伸び続けている。かつては古着と新品の関係はトレードオフだったが、その関係性も薄れているという。ショッピングの際の選択肢のなかに、ハイブランド、百貨店系アパレル、ファストファッションなどと並んで、「古着」が加わったといえそうだ。フリマアプリの「メルカリ」などが普及し、2次流通市場が広がったほか、サステイナビリティ(持続可能性)への意識が高まったことも古着人気の定着を後押ししている。オールドラルフローレン、オールドギャップ。若者を中心に流行している90年代のアイテムなどは、古くて価値が高いという意味の「ヴィンテージ」ではなく、「オールド」とよりカジュアルな雰囲気で呼ばれている。今後古着はますます身近な存在になっていきそうだ。”

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