Goldwin & Spiber、微生物の発酵たんぱく質デニム共同開発
ゴールドウィンはバイオベンチャーSpiberと共同開発した、微生物の発酵プロセスから生み出される「構造タンパク質」を素材に用いたデニムやフリースなどを発表しました。化石資源や動物由来の原料を使用しない、アパレル業界の「第3の素材」として注目されています。
”クモの糸が導く繊維革命、Spiber(スパイバー)”の項を参照
2022年3月28日付けSustainable Brands Japanに掲載された記事より、
”構造タンパク質素材「Brewed Protein(ブリュード・プロテイン)」。構造タンパク質とは、タンパク質のうち、人間の毛髪や皮膚といった細胞やクモの糸のように、構造的な役割を果たすものを指す。「ブリュード・プロテイン」とはタンパク質を醸造する、というような意味合いで、植物由来の糖類を栄養源とする微生物を培養し、その微生物がつくるタンパク質のみを抽出する。ゴールドウィンは、そこから精製した繊維を加工・デザインした衣服をラインナップに加え、先進的且つ実験的なプロジェクトを推進する。”
”同社は新事業の発表会で、「植物由来のタンパク質をつくり、循環させていく。機能やファッションという領域全てを包含するようなコレクションを育てたい」と説明している。今後の事業展開については、例えばファーはそもそもタンパク質であり、ブリュード・プロテインに置き換えることができる。エシカルな価値観に基づく意味からも、スポーツアパレルからラグジュアリーまで、幅広い素材をブリュード・プロテインに置き換える方針を示した。”
”スパイバーの関山社長は「生物はタンパク質を基幹材料として獲得したことで初めて進化できるようになった。進化は生物にとって非常にイノベイティブな機能であり、その進化をつかさどっているのがタンパク質だ。生態系や地球は循環を前提に設計されており、人間が産業的にタンパク質を使いこなせるようになれば、さまざまなものが一つのプラットフォームで循環できる」と話している。”
”両社は2015年から、ゴールドウィンがスパイバーに投資する形で素材開発を行ってきた。その後改良を重ね、2019年にはブリュード・プロテインを使った最初の製品であるTシャツを発売。同年のジャケット、2020年のセーターに続き、今回のフリースやデニムなどが4段目の製品化となる。この間、スパイバーが2021年にタイに建設したプラントが稼働を始め、米国でも早ければ2023年に生産を開始する計画であり、量産へ向けた移行段階にあるとしている。”
”現状ではコットン製品が年間2500万トン、ポリエステル製品は5000万~6000万トン生産されているのに対し、ウール製品は110万~120万トンの規模でしかない。しかし、反芻動物であるヤギや羊の毛からつくられるウールやカシミヤが地球温暖化に与えるインパクトは大きい。ブリュード・プロテインの環境負荷低減への貢献度について、例えばカシミアをブリュード・プロテインに置き換えることで、温室効果ガスの排出量や生産時に使う水の量も数分の一に減らせると説明している。”
”コットンはセルロースでできており、分解すればブドウ糖になる。現時点ではブリュード・プロテインをつくりだす微生物には植物由来の糖分を与えているが、長期的には廃棄されたコットン製品など、現在は廃棄物としか見られていないものをストックし、また新しい材料(原料)として使えるような仕組みを作ることができれば、世界は循環型の社会へと大きく変わる可能性がある。”
”両社によると、アパレル産業においてはコットンや動物由来の繊維などのバイオ素材と、ポリエステルやナイロンなど化学繊維の素材の、2つの循環経路を確立することが求まられる。後者についてはすでに化学メーカーなどが実用化に取り組んでいるが、前者の技術開発については、スパイバーが世界をリードするポジションにある。”