号外:日本でも進む「食品ロス削減」①、飼料化
このところの世界的な穀物価格の高騰などを受け、食糧安全保障という考えが注目されています。2020年度の日本の食料自給率はカロリーベースで37%と、先進国の中で最低レベルです。その一方で、日本では大量の「食品ロス」が発生しています。食品ロスは私たちの生活にとって非常に身近な問題で、私たち一人ひとりが考えて行動することによってある程度減らすことができます。しかし下記の記事で取り上げられているように、日本の食品流通が抱えるシステム的な問題が大きく影響しています。食品ロスは減らさなければなりません。そのためには食品の流通システムを見直していくことが必要です。
2022年4月14日付けYahoo JAPAN SDGsに掲載された記事より、
“まだ食べられるのに廃棄される食品は、日本で年間612万トンにものぼる。これは1人が毎日、ご飯茶碗1杯分の食べ物を捨てている計算になる。そんな食品ロスを減らそうと、各地でさまざまな動きが起こっている。廃棄食材を豚の飼料に加工する業者もあれば、賞味期限が切れた商品を激安販売したり、施設に寄贈したりする業者もある。「もったいない」思いから、食品ロスはどう減らされるのか。”
“周囲に畑や工場が広がる一帯。神奈川県相模原市の「日本フードエコロジーセンター」には、朝から運搬業者のトラックが次々と乗り入れる。荷台から降ろされるのは大量の廃棄食材だ。ここに運ばれてくる食品廃棄物は1日約35トン。それを次々に処理していく。同社は食品廃棄物を素材に、豚の飼料を製造する企業だ。運ばれてきた廃棄食材は破砕機の大きな口に放り込まれると、殺菌処理や発酵処理をされ、カルシウムやアミノ酸などを添加されて、24時間後には豚用の飼料に生まれ変わる。運び込まれる食材には、廃棄物と言えないものもある。この日に届いたクロワッサンや食パン。それらは個包装で、消費期限は取材日の翌日だった。つまり、まだ販売可能な食品が消費期限の前日に廃棄され、ここに運ばれてきたのだ。”
“2015年、国連は「持続可能な開発目標(SDGs)」を採択。その中で「つくる責任、つかう責任」をテーマとして「世界全体の1人あたりの食料廃棄を2030年までに半減する」というターゲットを掲げた。日本では2017年度に年間2550万トンの食品廃棄物が出されているが、農林水産省・環境省によるとそのうち食べられるのに廃棄される食品は612万トンだという。”
“日本フードエコロジーセンターに納入される食品廃棄物は2種類。一つはスーパーマーケットや百貨店など小売店から出る売れ残りや調理の途中で出たくずだ。おもにパンやおにぎり、野菜の切れ端など。もう一つは食品メーカーや飲食チェーンの加工工場の工程などで出る食品ゴミで、こちらは大量だ。提携する事業所は185ヶ所以上にのぼる。ここに運ばれてくるものは、従来、焼却施設へ直行していたものだ。廃棄物を焼却処分する場合、処理費用は1キロあたり約50円。同社はその半額以下で引き取っている。全国の自治体のゴミ処理費用の総額は年間約2兆円で、その金額のうち4、5割は食品といわれている。多額の税金が使われていて、これを減らすには経済と環境を両立させる持続可能な事業が必要だ。”
“食品廃棄物でつくる豚用の飼料は固形ではなく液状だ。液状飼料は消化効率がよく、乳酸菌の働きに整腸作用もあり、疾病率も低下させる。1日に42トン製造し、関東近郊の15戸を超える養豚農家にタンクローリー車で配送している。”
“同社では、食品メーカーらが廃棄量を減らせるように、毎月レポートを送っている。どんな品目の食品廃棄物が、いつ、どれくらい工場に入ってきたのかを分析し、レポートを作成している。食品ロスを減らしてもらうのが目的だ。たとえば米の廃棄量は、多い時期と少ない時期がある。それをあらかじめメーカー側が知っていれば、米の使用量を減らすことができる。ただ、廃棄物が減れば、自社の「原材料」も減ってしまうことになりそうだが、そうはならないようだ。同社によると、一つの事業所で食品ロスが減ると「こっちでも減らして」と別の事業場を紹介してくれるのだという。提携先が増えていくのだ。”