服の大量生産、日本で1日520万着がゴミに

このHPでも何度も繰り返していますが、衣料品におけるサステイナビリティの基本は、手間をかけた良い製品を、できるだけ長く大切に使うことです。良い製品とは、素材、デザイン、縫製仕様に配慮して長く使うことができて、素材、製造プロセス全体、流通において環境に配慮した服のことです。購入した服をできるだけ長く使うためには、「傷んだり、壊れた個所を修理するための材料や、修理できる場所(技術)が提供されることも大切です。そして、売れ残って安値販売されたり、未使用のまま廃棄されるような無駄な製品を生産しないことも大切です。私たち消費者は、このような基本的なことをもう一度考えてみる必要がありそうです。

2022年9月27日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

”「1着500円」。都内の量販店で、ワゴンセールの服につい手が伸びてしまう。店内を見渡せば、同じ服は4~5サイズほど用意してあり、いったい何着の在庫があるのだろうかと疑問に思った。衣服はあふれかえっている。”

日本国内での服の供給量は2020年に、30年前の約1.8倍にあたる35億点まで増えた。環境省によると、衣服はゴミとして1日に平均1300トンが焼却か埋め立てられている。1着を250グラムとすれば、1日に約520万着が捨てられている計算になる。捨てられるまでに、平均して10回ほどしか着用されていないといった調査もある。”

衣服は生産現場での環境負荷の高さも問題となっている。国連環境計画(UNEP)などによると、繊維産業は世界のCO2排出量のおよそ1割を占めている。世界で生産された繊維の半分以上は、石油由来のポリエステルを使用している。繊維を染めるときには大量の水が必要になる。世界の排水の約20%は化学物質を用いた染色の際に使われた後の水だという。環境に配慮するため、世界では衣服の大量生産に歯止めをかけようとする動きが活発になってきた。”

欧州委員会は2022年3月に欧州連合(EU)域内の繊維製品について2030年までに、リサイクルが可能で耐久性を備えるものとするように求めることを決めた。欧州ではこの20年間、服の価格が下落しているにもかかわらず、衣料品の家計支出は増加しており、過剰消費が指摘されていた。日本のファッション業界でも環境対策が始まっている。ユニクロなどを傘下に置くファーストリテイリングは生産数量を人工知能(AI)で予測するなどして効率化に取り組んでいる。”

“欧州委員会が3月に発表した「持続可能な循環型繊維製品戦略」は「消費者は高い質の品を手ごろな価格で買えるようになった。(大量生産・大量消費を前提とする)ファストファッションはもう時代遅れになっている」と訴えた。私たちの普段着にも、環境規制の波が押し寄せつつある。”

欧州委員会が3月に決めた、「欧州連合(EU)域内の繊維製品について2030年までに、リサイクルが可能で耐久性を備えるものとするように求める」という方針ですが、「耐久性を備える」ためには、材料の選択や縫製仕様といった製造段階での検討が必要です。一方で「リサイクルが可能」という点については、リサイクルの技術自体の問題もありますが、回収・分別という難題が立ちふさがっています。回収・分別しなければリサイクルはできません。これまで繊維製品のリサイクルが進まなかった最大の要因は、回収・分別のハードルが極めて高いということです。欧州連合(EU)がどのような突破口を見いだすのか注視していきたいと思います。と同時に、これは欧州だけの課題ではなく、当然わが国でも考えていかねばならない課題です。

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