自然環境の大切さを実感して、衣料品での「環境に配慮するという価値」を実践すること

日本の国土は温帯域に属し、生活に必要な水を得るのに十分な降水があり、山地が多い地形で河川が発達し水がスムーズに循環しているので、生活に必要なきれいな水を不足なく得ることができます。このところの気候変化による水害の発生や公害のような環境汚染が問題になることもありますが、日本の「水環境」は世界的に見ても非常に恵まれています。中国内陸部、中央アジア、中近東、アフリカ等の水不足が深刻な地域は多数あります。欧州でも石灰分が多い水道水は飲料水としては不向きでミネラルウォーターが必需品です。この恵まれた「水環境」をどれだけの日本人が実感しているでしょうか。

私と私の家族は海外で生活した経験から、日本の「水」と「安全」のありがたさを「実感」しています。きれいな水がなければ、おいしいご飯も炊けないし、おいしい日本酒も飲めません。情報として「知って」いることと、そのことを「実感」していることでは意味合いが異なります。これだけ多くの情報が溢れている時代ですから、世界の各地から発信される環境危機についてのニュース(事実)を、多くの皆さんが目にされ、耳にされていると思います。しかし自分たちの周辺で厳しい状況(危機)に遭遇しなければ、なかなか「実感」につながりません。ただ知っているだけではその次の段階である「行動」につながってゆきません。しかし危機に直面してからでは、その解決に膨大な労力が必要になります。そうなる前に危機を回避する手立てを考えて、「行動」することが必要なのだと思います。ひとりひとりが(私自身を含めて)今自分の周囲にある快適な環境が決して当たり前のものではなく、ほっておいても将来も同じ環境が約束されているものではないことを認識することがスタート地点になります。

環境省のHPに「リデュース・リユース取組事例集」が掲載されています。ここでは「服のリユースの促進」に関係して、日本各地のNPO、地方自治体、ボランティアの人々が「環境に配慮するという価値」(サステイナビリティ)を理解し、その理解を広めるための活動を実施、「行動」していることが紹介されています。

古着をもっとリサイクル(イメージ)

*NPO法人中部リサイクル運動市民の会(愛知県)

1980年から市内のスーパーやホームセンターの駐車場、寺院等において定期的に「リユース&リサイクルステーション」を開催し、市民から不用品の寄付の受付や資源回収を行っている。寄付を受けたものについてはボランティアが選別し、リユース品として販売している。リユース品目:本、衣類、布類、かばん、くつ、陶磁器、ガラス製品、キッチン用品リユース品を販売した収益は、環境活動・社会貢献活動(被災地支援等)に還元している。市内の事業者や寺院等が回収場所や販売店舗を提供している。新聞販売店等で構成される名古屋リサイクル推進協議会が隔月25万部の折り込みチラシの制作と折り込みを無償で実施。市はリユース&リサイクルステーションに事業協力金を提供し、広報面でも支援している。

*NPO法人WE21ジャパン(神奈川県)

限りある地球の資源を大切にし、無駄な大量消費を抑えるリユース・リサイクル活動を中心に1998年に設立。神奈川県内に55か所のリユース・リサイクルショップ「WEショップ」を展開。家庭で不用な衣類や雑貨を寄付してもらい販売している。その収益は、主にアジア地域に生きる人々の生活向上や自立支援などに活用されている。

*上山市(山形県)

ごみの減量とリサイクルの推進による循環型社会の実現を目指して、2008年「ごみゼロかみのやま市民行動宣言」を市議会で議決。そのスタートアップ事業として「おさがりボックス」の運営を開始。ごみに出される衣類にはまだ使用できるものも多く、特に体の成長が早い子供服は状態の良いものが少なくない。そこで「おさがり」として衣類のリユースを促進する活動を展開。上山市内の保育園、幼稚園で「おさがりボックス」を設置し、不要になった子供の衣類を入れてもらい、また「おさがりボックス」の中に自分の子供に適した衣類があれば持ち帰ってもらうというシンプルな活動。

*宇部市(山口県)

可燃ごみの減量および資源の有効利用を検討するなかで、子供服はサイズが合わなくなるのが早く、他の衣服に比べて古着が発生しやすいことから、「まだ使えるのに捨てるのはもったいない」という子育て世帯の保護者層の想いを受けて「子育て支援リユース事業」を開始。子供服と絵本の回収・再利用を目的に40名のボランティアが活動している。ボランティアは回収した子供服・絵本を展示・提供するリユースフェアの準備、運営や物品の仕分け、整理等を担当。市は市役所等の市有施設を回収拠点や回収された製品の整理会場として提供している。

*名護市(沖縄県)

不用になった学生服・式服を回収し、新たに必要とする学生に提供することで、円滑なリユースの実現を目指す取り組み。名護市は、「卒業した子供が着ていた制服・式服をごみとして排出するのではなく、必要としている人に譲りたい」という保護者の要望を受け、資源の有効利用とごみの減量化促進の一環として「学生服リユース事業」の取り組みを開始。各校でのPR(ポスター作製や校内放送)及び回収はそれぞれの生徒会が担当し、「ものを大切にする心」や「環境に対する意識」を育んでゆく効果も期待されている。

このような活動ひとつひとつの積み重ねが、衣料品の「環境に配慮するという価値」(サステイナビリティ)を理解してもらう方法だと思います。またこのようなリユース活動を通じて共通理解が形成され広がってゆくことで、衣料品のリサイクルの重要性についての理解も深まってゆくと思います。リデュース、リユースした衣料品も最後は廃棄物になります。廃棄される衣料品のほとんどは焼却されています。焼却による温室効果ガスの排出を抑制するために、衣料品のリサイクルを促進してゆくこと、焼却以外の廃衣料の処理を考えてゆくことは大切なテーマです。

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