「環境に配慮するという価値」を持った服が選ばれる時代
みなさんが店頭で服を選ぶとき、どのような基準で服を選ばれているでしょうか。私が服を買う場合は、店頭に足を運ぶ前にどのような服を購入するかはおおよそ決まっています。その時の自分に必要だと思う服を購入しますので、服のカテゴリー(ビジネス、カジュアル、フォーマル、スポーツ、ルームウェア等)、シーズン(春・夏・秋・冬)、服種(アウター、ボトムス、トップス、インナー等)等についてはおおよそ決まっているということです。それから訪れる店舗の候補をいくつか考えます。あまり冒険はしないので、訪れる店舗はだいたい決まっています。いざ店頭で服を選ぶときに考えることは、自分が期待している性能や効果をその服が満たしてくれるかどうかということです。もう少し具体的に言えば、
*素材(天然繊維 or 合繊、織物、ニット、厚み、重さ/軽さ、柔らかさ、撥水性、通気性等)
*デザイン(スタイル、無地、柄、色)
*サイズ(絶対条件)
*ブランド(あまりこだわりませんがいくつか好きなブランドはあります)
*価格(おおよその予算が決まっています)
ということになります。これらの条件を色々勘案して、総合的に気に入ったものを選んで購入することになります。
これからは、前述の衣料品についての「期待性能や効果」に「環境配慮」という項目が加わることになります。環境配慮という考えは決して新しいものではなく、これまでに色々な製品で重要な性能、効果として組み込まれてきました。しかし衣料品についていえば、これまでに環境配慮をきちんと打ち出した製品が少なく、店頭でのPRがされているわけでもなく、結果として服を購入する消費者の選択基準としてもほとんど影響を与えてこなかったように思います。なぜでしょうか?
アパレル企業は消費者が求める(求めると予想している)製品を企画し、店頭に並べます。ということは、衣料品での環境配慮という性能、効果については、これまで消費者からの要求があまりなかった(少なかった)ので、アパレル企業の製品企画の中であまり重要視されてこなかったということだと思います。これからは消費者側から、「この製品は環境に配慮しているのか?」という問いを発してゆきましょう。そうすることがアパレル企業を動かしてゆきます。そのためにも、みなさんが「衣料品も環境問題と無縁ではない」ということをご理解いただき、「環境に配慮するという価値」(サステイナビリティ)を求めていただきたいと思います。
素材の選定やデザイン、縫製仕様を考えることで作られる「長く使える衣料品」は立派な環境配慮した衣料品です。またこのような衣料品であればリユースされる可能性も高くなります。消費者側で使用後衣料品をリサイクルに回すとすると、古着回収のような機会を通して廃棄物業者にわたり、マテリアル・リサイクルされることになります。ここでは細かな分別はできないので、できるだけマテリアル・リサイクルしやすいような仕様にしておくことも環境配慮です。このような環境に配慮した特徴を、アパレル企業はどんどんPRして欲しいと思います。また、消費者が使用後衣料品をできるだけ可燃ごみとして排出しないというのも立派な環境配慮です。
アパレル企業側から、衣料品の新しい価値として環境配慮を打ち出すこと、環境配慮によって他社品と差別化してゆくという戦略は有効だと思います。実際に今でも自社品の店頭回収からリユース、リサイクルというキャンペーンを実施しているアパレル企業はありますし、みなさんもご存知だと思います。ただこれまでの取り組みは、必要とされる手間やコストとの関係で限定的な取り組みになりがちでした。しかし衣料品の「環境に配慮するという価値」(サステイナビリティ)が広く認められて、それをある程度価格にも反映できるようになれば、その取り組みは幅広く、継続的に展開できるようになると思います。
アパレル企業が「環境配慮」という性能、効果を製品企画に盛り込んで有効に活用するためには、衣料品の環境配慮にも色々な方法がありますから、どのような環境配慮を意図しているのかを明確に示し、それを実現するための仕組み(誰が、いつ、どこで、どのような機能を果たしてゆくのか)を消費者に誤解なく理解してもらうことが大切です。そして消費者がその企画に参加することで満足感が得られるような仕組みであれば、リピーターが発生し、長く継続できる取り組みになると思います。アパレル企業として、前述の「長く使える衣料品」を徹底的に追及するというアプローチも有効だと思います。ケミカル・リサイクルや生分解処理のような特別な処理を伴う取り組みは、素材メーカーとの密接な連携が必要になります。その密接な企業連携自体が消費者への強力なアピール・ポイントになります。チームとして取り組むことで、オペレーションとしての信頼度も格段に向上するでしょう。
「環境に配慮するという価値」(サステイナビリティ)を持った服が選ばれる時代になって欲しいと思います。地球温暖化による環境危機は、既に地球上の至る所で顕在化しています。衣料品として可能な環境貢献については、関係者が協力、連携して、可能な限りの対応をして欲しいと思います。