号外:世界遺産の屋久島、実は「EV天国」②

世界遺産の屋久島でEVを普及させるという話題の続きです。屋久島町は、将来的にEV専業の自動車メーカーに転身することを表明しているアウディ(ドイツ)の日本法人と連携しています。決して規模は大きくありませんが、再生可能エネルギー(水力発電)をベースに、自給自足で完結できる、カーボンニュートラルな生活を目指す取り組みです。このような取り組みの積み重ねが、世界を、私たちの日々の暮らしを、持続可能なものに作り変えていくことになるのだと思います。屋久島の自然を汚すことなく未来につないでいくこと、そうすることによって、私たちはいつまでも屋久島の自然を楽しむことができます。

2023年9月29日付け日経クロストレンド電子版に掲載された記事より、

“さらにファーレン九州は、2023年10月より観光ホテル「THE HOTEL YAKUSHIMA」を拠点に、アウディ製EVを使ったレンタカー事業にも乗り出す。ファーレン九州の社長の金氣重隆氏は、「自然豊かな屋久島をEVでドライブすることで、アウディの良さはもちろんだが、環境へ配慮した島の魅力を知ってほしい」と話す。一般的にアウディのレンタカーとなれば料金は高価になりがちだが、同事業では旅行者が比較的借りやすい料金で提供するという。”

“筆者は2023年7月、包括協定締結後に大きく「EV天国」へと変貌を遂げようとする、屋久島の現状を実体験する機会を得た。屋久杉などに代表される豊かな森林や澄んだ水が流れる美しい河川、そして限りなく100%に近い再生可能エネルギーの電力供給を可能とした水力発電設備などを、アウディ製EVを駆って一通りめぐってみた。”

アウディのレンタカー

“島の面積の約85%が森林であり、美しい海に囲まれた屋久島を訪れる旅行者たちの目的はその豊かな自然にあるとは聞いていたが、確かにとても空気が澄んでいる。これまでガソリン車に頼らざるを得ず、環境意識が高い旅行者によっては、結果として自身の移動が環境負荷につながることに心苦しさを感じていただろう。こうした美しい自然の空気を汚さずに移動できるというのは、なんとも心地よい気分になる。しかも、なにしろ屋久島には安定供給が可能な水力発電によって、充電する電力も再生可能エネルギーだという点は、あえてEVに乗る意義も高めてくれる。

屋久島のEVシフトへの取り組みは、まだ始まったばかりだ。町長自身も、「観光客が目指す屋久杉があるヤクスギランドなどの山間部には、まだ充電設備がない」と課題があると話す。もし設置できれば、森を長距離ドライブするような場合でも必要な充電が途中で行いやすくなり、山間部を目指す観光客にも積極的にEVを活用してもらえるようになると期待する。”

地球温暖化の抑制に向けて、世界が脱炭素社会の実現を目指す今、日本でも再生可能エネルギーの活用が注目されている。しかしながら、資源エネルギー庁のデータによれば、日本の再生可能エネルギーの割合はわずか22.7%(2022年のデータ)にとどまる。日本政府はこれを2030年度までに36~38%へ高め、主力電源の一つへと成長させることを目標に掲げる。日本のCO2排出量は、16.7%(2021年度)を運輸部門が占め、そのうち87.6%が自動車(バスやトラック、二輪車なども含む)だ。そのため日本でも、2035年に乗用車新車販売を100%電動車(EV、PHEV、FEVなど)とする目標を掲げる。CO2排出量を削減できる電動車へのシフトは、今後も環境政策の大きな柱となっていくのは間違いない。”

その過程で見逃されがちだったのが、どのように作られた電力を使うか、だった。日本の電力供給の主力は火力発電であり、たとえEVであっても、間接的にはCO2排出が行われてしまっているのが現実だからだ。真のカーボンニュートラルなクルマ社会の実現には、地域に最適な再生可能エネルギーによる電力供給源の確保にも目を向ける必要がある。その実現をいち早くクリアするために動き出したのが屋久島であり、島民自身も環境負荷を下げる取り組みに熱心だ。こうした住民感情も含めて、世界遺産であるこの島の環境保全活動を未来に向けて紡いでいく取り組みは、世界的に見ても先進的といえる。小さな島の小さな取り組みだが、後に「とても重要な一歩だった」と振り返る日がくるのかもしれない。”

美しい空気を汚さない観光

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