砂漠にできたファッションの墓場②
ファスト・ファッションの「ごみ捨て場」についての話題の続きです。使われなくなった服をリサイクルすることは大切です。しかし、そもそも必要以上に服を生産して、安価だからといってまだまだ使用可能な服を捨ててしまうような消費行動は、資源と労働の浪費でしかなく、また著しく環境負荷の高い行為です。持続可能な循環型経済への意向が叫ばれていますが、変わらなければいけないのは、企業というより、私たち消費者なのだと思います。
“輸入業者が必要としなかった服はトラックに載せられて、数キロ離れたアルト・ホスピシオ郊外にある、別の集積所へと運び込まれる。そこで再び仕分けを経て、小規模店や、ラ・ケブラディージャという巨大な露天市場で売られることになる。この市場には、7000軒ほどの店が約800メートルにわたって軒を連ね、活発な商いが行われている。そして、この市場でも売られることのない衣類が、砂漠行きとなる。その多くは生分解しない合成繊維で作られている。砂漠にはごみをあさる人々がやって来て、めぼしいものを持ち去る。ある涼しい午後、女性が服の山を物色していた。夜の寒さをしのぐためのフリースや毛布のほか、ラ・ケブラディージャ市場に持っていけば小銭を稼げそうな状態の良い服を拾い集めていた。”
“ただ、こうしたリサイクルの仕組みは、初めこそある程度は役立っていたが、今ではあまりの量に手に負えない状況だ。そこで、規模はさまざまだが、衣料廃棄物に対する新たな取り組みが進行している。2018年、フランクリン・セペダは、廃棄された繊維製品を使って、建築用の断熱パネルを製造する会社を立ち上げた。また、チリの首都サンティアゴに拠点を置く別の新興企業、エコシテックス社は、廃棄衣類から糸を作っている。一方、イキケでは2024年にディララ社がリサイクル工場を開設し、古着からソファのクッションの詰め物を製造する予定だ。”
“どれも小規模ながら重要な取り組みだ。だが最も有望な解決策、つまり問題の大きさに見合った策を講じられるのは、チリ政府だ。世界銀行は、2050年までに毎年34億トンにのぼる製品廃棄物が発生すると予測している。増え続ける廃棄物への対応策として、製品の寿命が終わった時点で、製造業者がその責任を負うよう求めている国も多い。インドやオーストラリア、日本やカナダ、米国の一部の州では、拡大生産者責任という制度を導入している。2016年、チリ政府も拡大生産者責任法を制定した。この法律では、製造業者と輸入業者が、6種類の廃棄物(潤滑油、電子機器、電池、小型電池、容器と包装、タイヤ)に対して責任を負うことになっている。ただ当初はここに、繊維製品は含まれていなかった。しかしチリ環境省では、現在、繊維製品を含む3種類の製品を拡大生産者責任法に加える作業が進行している。大切なことは、いわゆる「蛇口」を閉めて、服が砂漠に流れ着かないようにすることだ。チリをごみ捨て場からリサイクルの拠点に変えることを目指している。だがその間にも、ファッションの流行は次々と変わる。インターネットで手軽に売り買いされ、着られることがなくなった服は、アタカマ砂漠の赤い砂の上に積み上げられていくだろう。”