号外:関西国際空港、開業30年「荷物紛失ゼロ」

私は貿易関係の仕事が長かったので、日本や駐在先の国から国内外への出張が頻繁にあり、ずいぶんと飛行機に乗りました。飛行機で移動する際に気になることは、フライトの遅れやキャンセル、そしてチェックインした荷物のトラブル「ロストバゲージ」です。直行便の場合はほぼ大丈夫なのですが、乗り継ぎがある場合、経由地の飛行場の不手際で荷物が間に合わず、同じルートを飛ぶ次の便で到着するというようなことがありました。幸いなことに、私の荷物がどこへ行ったのか分からなくなって、完全に紛失してしまうということはありませんでした。チェックインする荷物は搭乗する航空会社のカウンターで預けますが、その後到着地の荷物受取所(ターンテーブル)で受け取るまでの管理は、各飛行場(出発地、到着地、経由地)の地上スタッフが行っています。そして、優れたサービスを提供してくれる飛行場と、そうでない飛行場があるのです。旅行者個人ではどうしようもないことなのですが・・・。ともかく関西国際空港の優れたサービスに拍手です。

2024年4月22日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

関空の国際線ロビー

関西国際空港では1994年9月の開業以来、空港側の原因による「ロストバゲージ」(荷物の紛失)が一度も起きていない。正確かつ迅速な受け渡しは国際的に評価され、快適でストレスのない移動を陰で支えている。”

“3月下旬の昼下がり、関空の滑走路に緑色の垂直尾翼の香港・キャセイパシフィック航空の大型機が着陸した。空港運営会社グループで地上業務を担うCKTS(大阪府泉佐野市)のスタッフ5人は荷物を収めたコンテナを台車つきの車両に載せ替え、ターミナル内の荷さばき場へ急いだ。荷さばき場ではコンテナからスーツケースなどを降ろす。取り付けられたタグに従いファースト、ビジネス、エコノミーのクラス順に荷物をターンテーブルに置く。2人一組で指をさしながらコンテナ内に荷物が残っていないか確認。着陸から12分で作業を終えた。

ロストバゲージは空港出発時の積み忘れ、経由地での積み込みのミスなどで発生する。航空関連のシステム開発などを手掛けるSITA(スイス)によると、世界の航空会社で2022年に誤処理した荷物は乗客1000人当たり7.6個ある。関空が扱う手荷物は年間1000万個(2023年度)。開業から30年近く空港側の原因による荷物の紛失が起きていない。

関空ではロストバゲージがゼロ

ポイントは重層的な確認作業にある。出発空港から届く荷物の種類と個数、搭乗客の乗り換え情報は、必ず2~3人のスタッフが把握する。CKTSで手荷物サービス業務の現場責任者を務める土生田剛チーフは「思い込みによるミスを防ぐため、複数人での情報共有が欠かせない」と話す。航空機の到着後、あらかじめ把握した荷物個数との食い違いが出た場合、機内の貨物室や荷物を降ろした駐機場、荷さばき場を即座に点検する。

“荷物の処理工程を定めたマニュアルには、航空会社ごとの荷物管理ルールや、機体内の荷物の収容場所などの情報が記されている。開港当時から関連作業に携わる、CKTSの木戸昭則マネージャーによると、大阪国際(伊丹)空港などの知見を基に作ったという。現場の指摘を取り入れてマニュアルを更新することもある。数年前には大型機に加え、コンテナを使わず荷物を直接積む中・小型機でも、機体から荷物を降ろす際に個数を確認する運用に改めた。乗客がストレスを感じないように、到着から15分以内に荷物を受取所に送るのが目標だ。スーツケースなどは持ち手の方向をそろえてターンテーブルに載せ、壊れやすい楽器、ベビーカー、スキー板などはスタッフが直接手渡しする。雨天の作業でぬれた荷物はタオルでふくなど、随所で細やかな配慮が光る。

“国際的な評価も高い。英航空調査会社のスカイトラックがまとめた2024年の世界空港ランキングで、関空は荷物受け渡し効率や受け取りまでの時間などを評価する「手荷物取扱」部門で8度目の1位になった。2025年国際博覧会(大阪・関西万博)では4~10月の開催期間中に海外から350万人の来場が見込まれる。同年の関空利用者は3733万人(2023年比1399万人増)に達するとの推計もある。荷物の増大も予想されるなか、現場を束ねる土生田さんは「『ロストバゲージゼロ』の記録を更新し、活気のある空港にしていきたい」と意気込む。”

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