号外:COP29、途上国への支援増額は難航か

11月11日から22日までアゼルバイジャンのバクーでCOP29(第29回国連気候変動枠組み条約締約国会議)が開催されています。今回は日本の石破首相が国会日程等の関係で欠席し、米バイデン大統領やドイツのショルツ首相、EUのフォンデアライエン委員長などの首脳が欠席しています。今年も気候変動による自然災害が世界各地で発生しており、温暖化対策は待ったなしの状況です。各国・地域の政治状況が不安定化していますが、建設的な議論が継続されることを期待してやみません。

2024年11月10日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

“11月11日にアゼルバイジャンのバクーで始まる第29回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP29)は、温暖化への危機感が世界中で強まる中での開催となる。2024年の地球平均気温は2023年に続き過去最高を更新するのがほぼ確実で、強大なハリケーンの米国直撃、日本や欧州の猛暑・豪雨など温暖化が背景とみられる極端な現象が相次いでいるためだ。”

“会議の柱は大きく2つある。一つは先進国などから途上国への支援の拡大だ。議長国アゼルバイジャンは「金融支援のCOP29」を掲げ、具体的な金額を含む合意を目指す。もう一つは各国が提出へ向けて準備している2035年の温暖化ガス削減目標が十分に引き上げられ、「野心的」なものになるよう流れをつくることだ。10月のスペインの大洪水など会議直前の災害は、温暖化対策が一刻の猶予もならないことを見せつけ、合意形成を後押ししうる。”

“だが、長年COPを見続け、ドイツの政策などにも関与してきたポツダム気候影響研究所のヨハン・ロックストローム所長は「今回、金融支援では大した合意はないだろう」と指摘する。化石燃料の削減も「昨年のCOP28の合意内容の再確認にとどまる」とみる。先進国による金融支援は2020年までに毎年1000億ドル(約15兆円)という約束すら守られず、ようやく2022年に達成できた。次の段階としていつまでにどれだけ上積みするのか、議論は収束していない。米世界資源研究所(WRI)によれば、途上国は年1兆ドル以上を求めている。その半額は国際開発金融機関(MDBs)を含む公的資金、残りは民間資金で賄う。2030年までに年2000億~2500億ドル、2035年までに同4000億ドル程度を確保できるメドがつくかが焦点だという。資金拠出を中国や韓国、中東諸国にまで広げるかどうかも議論になりそうだ。

COP28では、議長国のアラブ首長国連邦(UAE)が合意の「着地点」を周到に準備した。開催初日にジャベル議長が気候変動で被害を受けた途上国を支援する基金制度の中身で合意したと発表し、世界を驚かせた。主要産油国ながら「およそ10年間で化石燃料からの脱却を加速」という合意に導き、COPの合意文書に初めて「化石燃料」の文言を入れた。アゼルバイジャンも石油や天然ガスが主要産業だが、UAEほど周辺国への影響力は大きくない。資金拠出や削減目標の引き上げという難題で、強力なリーダーシップ発揮できるかは不透明だ。”

“ウクライナ侵略をめぐり西側諸国と対立を深める一方、アゼルバイジャンと良好な関係を保つロシアの介入を受けるのではと懸念する声もある。米大統領選で、温暖化対策に後ろ向きでパリ協定から再び離脱する意向を示すトランプ前大統領が勝利したことが、資金支援などの合意を一層困難にする可能性もある。日本を含め多くの国が首脳の出席を見送るとはいえ、気候変動が「後戻りできないところにさしかかりつつある」(ロックストローム氏)なかで時間を無駄にはできない。

“アゼルバイジャン政府系シンクタンクから英オックスフォードエネルギー研究所に移ったグラミル・ルザエーバ上級客員リサーチフェローによると、アゼルバイジャンは強力な温暖化ガスであるメタン排出の測定・報告・検証の仕組みづくりを提案する意向だ。産油国や石油会社の拠出金による、途上国向け温暖化対策基金も立ち上げた。大きな合意や決定はなくても、「物事が多少前進した」という感覚が得られる会議にはなるかもしれない。日本の排出削減や防災関連の技術支援、人材育成への期待が大きいことも忘れてはならない。

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