号外:米政権、パリ協定離脱を決定

アメリカでトランプ大統領が就任し、早速に「パリ協定」からの離脱を発表しました。それだけではなくWHO(世界保健機関)からも脱退するようです。バイデン前大統領が署名した約80本の大統領令のすべてを取り消すつもりであると報道されています。パリ協定からの離脱については、以下の記事にもありますが、「中国が平気で汚染を続けているのに、米国が自国の産業を妨害することはしない」と述べているようです。地球環境の問題は、そんな低次元な問題ではないはずです。トランプ大統領は、あるいはアメリカ合衆国は、アメリカ国民を含む将来の世代が被る災厄について、想像力を働かせることができないのでしょうか。「国家エネルギー緊急事態を宣言する」と表明し、国内に眠る化石燃料を「掘って、掘って、掘りまくる」という発言には、ただただ驚くばかりです。

2025年1月21日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

トランプ大統領就任

トランプ政権は20日、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」から再び離脱すると発表し、大統領令に即日署名した。これまで約束した資金拠出も撤回する。就任演説で「エネルギー緊急事態を宣言する」と表明し、石油などの掘削を進める考えを表明した。温暖化を防ぐ国際的な機運は大きく後退する懸念がある。20日の就任演説では過剰な政府支出とエネルギー価格の高騰がインフレ危機を招いたとして、「黄金の液体」と表現する石油を「掘って、掘って、掘りまくる」と強調した。”

“就任直後にホワイトハウスが公表した声明は、化石燃料の掘削を制限して再生可能エネルギーを推進したバイデン前政権の政策を「気候過激主義」と呼び、採掘規制を見直すと宣言した。まず風力発電所への政府所有地のリースを廃止すると明らかにした。”

“トランプ氏は20日の演説で「不公平で一方的なパリ協定から即時離脱する」と宣言した。「中国が平気で汚染を続けているのに、米国が自国の産業を妨害することはしない」と理由を説明した。同日夕に署名した大統領令では、ただちに離脱の意思を国連の事務総長に通知し、財政拠出を中止、撤回すると関係機関に命令した。”

“パリ協定は2015年の第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択された。「産業革命からの気温上昇を1.5度以内に抑える」という目標を掲げる。欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」によると2024年の世界の平均気温は初めてこの基準を超えて1.6度高くなった。米国は第1次トランプ政権でパリ協定から離脱したが、2021年に就任したバイデン前大統領が初日に復帰を指示した。エネルギー開発の推進を掲げるトランプ氏は再離脱を公約に掲げて大統領選に勝利した。

“エネルギー開発を巡ってはトランプ氏が想定するほどの効果を見込めないとの見方もある。バイデン前政権は6日、6億2800万エーカーと国土面積の3割近い規模で海洋掘削を禁止する覚書を公表した。この覚書は法律をもとにした措置のため、撤回には連邦議会の承認が必要との指摘もある。”

トランプ政権はエネルギー価格の引き下げを高インフレ対策と位置付けてきた。声明では「米国を再び手頃な価格でエネルギーを支配する国にする」と指摘。「自動車、シャワーヘッド、トイレ、洗濯機、電球、食器洗い機における消費者の選択が広がる」とも説明した。だが、その効果も不透明だ。トランプ氏は前政権で放出した石油の戦略備蓄を再び回復する考えで、仮に増産になっても市場に出回る量がどれほど増えるかは見通せない。そもそも原油価格は国際市場で決まり、地政学的リスクなど幅広い要因が絡む。米国のインフレ率はすでに米連邦準備理事会(FRB)の目標近くまで低下している。関税の引き上げや移民の制限といったトランプ氏の政策はむしろ物価上昇圧力を再燃させるリスクとして警戒されている。

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