号外:アウトドア用品、六甲山が育てた関西企業
2019年11月12日付け日本経済新聞電子版掲載記事より
このHPでもパタゴニアのようなアウトドアブランドを取り上げました。アウトドアといっても、本格登山からハイキング、トレッキングやキャンピング、サーフィンやカヤックなどまで含めると非常に多彩です。共通しているのは、いずれも自然環境を相手にする活動で、良好な自然環境がなければ成り立ちません。アウトドアブランドというと米国など海外企業のイメージが強いですが、関西にはモンベル(大阪市)のような有力企業もあります。
日本にはアウトドア関連企業が116社程度あるそうです。このうち関東には84社、関西には16社で、関西は少なく見えます。しかし関東は外資系の日本法人がほとんどで、関西には地元資本の企業が多く、知名度の高い企業もあります。見かけの数字よりも存在感があると言えそうです。
登山用品店の好日山荘(神戸市)は神戸市で創業しました。ファンドの支援を受けた関係から東京都に本社を置いた時期もありましたが、実質的な本社機能は神戸市から動かしていません。こだわる理由は「創業者が山好きで、六甲山の存在が影響した。」ということです。
神戸市北部に位置する六甲山は日本の近代登山、ロッククライミングの発祥地として知られています。明治期には日本アルプスを世界に紹介した英国人宣教師、ウォルター・ウェストンらが登山を楽しんだとされています。六甲山は登山家のほかにも、アウトドア関連企業の経営者も引きつけています。登山ウェアのファイントラック(神戸市)の金山洋太郎社長もそのひとりです。「神戸市以外での起業は考えられなかった。市街地から六甲山の登山口まで公共交通機関でわずか30分。カヤックも2~3時間圏内で楽しめる。アウトドア好きにとってこれほど便利な場所はめったにない。」と話しています。
もちろん、アウトドア関連企業が関西にある理由は六甲山だけではありません。商品の安定供給に欠かせないサプライチェーンなどの事業環境が整備されていることも大きな理由です。モンベルはウェアを生産してくれる大阪市船場地区の繊維産業を重視しました。「創業者の辰野勇は登山家であると同時に繊維の専門家。気軽に商談できる場所が当社の成長に必要でした。自転車で船場の繊維問屋を訪ねていました。(同社)」
アウトドア用品のロゴスコーポレーション(大阪市)は2018年6月、京都府城陽市にテーマパーク「ロゴスランド」を開きました。建物内部にテントを張っているため虫刺されなどの心配が少なく、初心者でもキャンプを満喫できます。人口の多い首都圏ではなく関西を選んだのは「手軽にアウトドアを楽しみたい消費者が多い」(同社)ことが一因だそうです。
阪急神戸線芦屋川駅の北側から、日本のロッククライミング発祥の地と言われる「芦屋ロックガーデン」という岩登りコースがあります。
“風吹岩まで、高低差270m、距離1000m、時間にして1時間程度の登山道です。登山道は安全に登れるように整備されているので、初心者の方でも、お子さんでも大丈夫です。手軽な岩登りコースですが、ボロボロの花崗岩を歩くところもあり、急勾配の滑りやすいところもあるので、しっかりとした靴で出かけましょう。風吹岩へ到着後は同じルートで下山するのも良いですが、阪急岡本駅へ下るルートや北方向へ進み六甲山を目指す登山コースもあります。”
というご案内です。もう数年前になりますが、私も本当に気軽な気持ちで出かけてきました。風吹岩から阪急岡本駅下るルートをとったのですが、岡本駅に着いた時にはほとんどヘロヘロでした。決して山をなめてかかってはいけないと、まさに痛感した一日でした。コース全体は変化に富んでいて、眼下の景色も素晴らしかったです。野生のイノシシに遭遇することもあるそうですが、私が行った時には現れてくれませんでした。機会があれば、みなさんも体調を整えてトライしてみてください。