バーバリーが取り組む「カーボン・インセット」
ファッション業界でもCO2の排出量を削減する動きが進んでいます。地球温暖化対策は、非常に規模の大きいテーマで、国連を中心にして、世界各国の連携が必要です。その一方で、企業や個人で取り組むことができる対策もあります。企業や個人として実施可能な対策を積み上げてゆくことも、とても大切なことです。2018年、英高級ブランドのバーバリーは服や香水など余剰在庫約41億円相当(販売価格ベース)を焼却して廃棄したとして、厳しい批判に晒されました。ブランド価値の低下を懸念する同社は廃棄処分を中止して、環境対策に前向きに取り組む姿勢に転じました。
2020年3月20日付けSustainable Brand Japanに掲載された記事より、
“バーバリーは、事業で発生する環境への影響を最小限にとどめるための新たな対策として「カーボン・インセット」に取り組んでいる。カーボン・インセットとは、自社のバリューチェーンで関係先と連携するなどして、CO2の排出量を削減することだ。自社のバリューチェーンと関係ない企業と連携するカーボン・オフセットとは異なり、カーボン・インセットの場合は、アグロフォレストリー(樹木を植栽し、樹間で家畜・農作物を飼育・栽培する農林業)や植林事業を自社のサプライチェーンで行う。炭素を発生源で抑え込み、空気中に放出するのを防ぐだけでなく、地域社会と協働し、気候変動による影響への復元力を強め、生物多様性を促進し、エコシステムを回復させ、現地の生産者の生活を支援する。世界中のサプライチェーンで、「カーボン・インセット」プロジェクト実施を後押しするために、バーバリーは「リジェネレーション(環境再生型)・ファンド」を立ち上げた。最初はオーストラリアの羊毛生産者を支援するようだ。”
“バーバリーはPUR Project(ピュア・プロジェクト)と連携する。世界40ヶ国150社と連携する同組織は、企業と協働して、企業が依存しているエコシステムを再生することを目指している。羊毛業者と共に、環境再生型農業を設計・実施することで、森林火災の影響で打撃を受けているオーストラリアの土壌を修復しようとしている。”
“バーバリーは2月、ロンドン・ファッション・ウィークでの2020年秋冬コレクションの発表をカーボンニュートラルで行った。2019年9月に行われた、2020年春夏コレクションに続き2度目となる。サステイナビリティ認証を受けた会場を使用し、電気自動車の利用を優先し、空輸を行わなかった。そのほかに排出されるCO2に関しては、オーストラリアの乾期の森林火災を減少させ、生態系に与える影響を減らす「サバンナ・ファイアー・マネジメント・プロジェクト」を通して相殺する。さらに、観客へのプレゼントを控え、代わりにオーストラリアの森林火災で影響を受けた生態系を再建するために、木を植えることにした。”
“バーバリーが掲げる温室効果ガスの削減目標は、SBT(化学と整合する温室効果ガス削減目標)イニシアティブから、パリ協定が目指す「2℃目標」基準を満たしていると認定されている。今回の「リジェネレーション(環境再生型)・ファンド」創設は、そうした取り組みをさらに前進させるもの。英国を代表するブランドは、英、米、欧州、中東、アフリカの小売店ですでにカーボンニュートラルを達成しており、2022年までに全世界でカーボンニュートラルを達成することを目指している。”
2018年の事件(?)以降、著名な英高級ブランドであるバーバリーが推進している取り組みを紹介しています。ファッション産業としては、原料から製品までのサプライチェーン全体で、水や薬品の使用、CO2の排出などの環境負荷を低減し、市場に投入される製品の3R(リデュース、リユース、リサイクル)を促進することが求められています。ファッション産業全体が連携して取り組む課題を設定することと同時に、各企業が自社ビジネスに直接関連する領域で、取り組み可能な環境対策を積極的に実施してゆくことが大変重要です。このような取り組みが色々な企業に広がってゆけば、地球温暖化対策の一翼を担うことになるでしょう。繰り返しになりますが、状況を傍観するのではなく、自社(自分)で実行可能なことを積極的に実施してゆくことが大切なことだと思います。