号外:環境省が気候危機を宣言!

小泉環境相は昨年12月にスペインのマドリードで開催されたCOP25(第25回気候変動枠組み条約締約国会議)に出席し、各国の代表と意見を交換しました。今年に入って、世界は新型コロナウイルス感染症への対応に追われていますが、欧州を中心に感染症からの復興策を気候変動、地球温暖化対策と連動させることで、持続可能な社会への移行を促進する方向が示されています。日本は、石炭火力発電所の国内新設や輸出案件を抱えており、脱炭素への取り組みが遅れているとの批判も受けています。感染症後の生活を再設計しなければならない今こそ、日本の気候変動対策への取り組みも促進しなければならないと感じています。

2020年6月16日付けSustainable Brand Japanに掲載された記事より、

環境省が気候危機を宣言

環境省は6月12日、気候危機を宣言した。小泉環境相は、2020年を「危機的な地球環境に対応する節目の年」とし、経済社会そのものを持続可能でレジリエント(回復力のある)なものに変革していくことが不可欠と語った。特に、食や電力の地産地消など衣食住や働き方といったライフスタイルの変革がCO2の大幅な削減につながると強調した。世界では新型コロナウイルス感染症の拡大により、環境政策を重視する傾向が強くなっている。環境省が今後、気候危機への取り組みをどう政策決定プロセスに組み込んでいくかも注目される。”

“小泉環境相は今月初めにも、地元の横須賀市で気候変動対策を求める若者団体「フライデーズ・フォー・フューチャー横須賀」から、2023年以降に稼働を目指す横須賀を含む国内の石炭火力発電所の建設中止を求める190通の手紙を受け取っている。実は環境省の気候危機宣言に実際の宣言文はないが、小泉環境相は検討すると答え、「宣言文を作る場合には、そうした若者の思いを加味することが大事。なんといっても、気候危機の影響を最も受けるのは将来世代の若者たちだ」と語った。”

“なお同宣言は、世界30ヶ国1700以上の自治体が発表している「気候非常事態宣言」とは異なる。環境相は「気候非常事態宣言は議会が出すもの。議会から出してもらうことが木興間の共有になる。これについては超党派の議員連盟で動いている」とした。”

“同日に閣議決定された「令和2年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」には初めて気候危機という言葉が盛り込まれた。気候災害が激甚化し、さらに今後も頻発かしていくことが予想される中、「単なる『気候変動』ではなく、私たちやすべての生き物にとっての生存基盤を揺るがす『気候危機』と言われている」と記されている。”

“今回の白書では、新たに「一人ひとりから始まる社会変革」という章が設けられた。国内の温室効果ガス排出量の約6割を食費やレジャー費など家計消費が占めていることから、ライフスタイルの変革を促すことで排出量を大幅に削減する狙いだ。具体的には、住宅への再生可能エネルギーや地域木材の導入、地産地消や有機食品の消費と食品ロスの削減、環境非配慮した衣服や衣服のリユース・リサイクル、Maasやグリーンスローモビリティの活用、自然が豊かな地方でのリモートワークなどを勧めている。”

“小泉環境相は「気候危機宣言を契機に、今後は多くのプレーヤーと危機感を共有して社会変革を促してゆきたい。新型コロナウイルス感染症そして気候危機をチャンスに変えてゆくには、脱炭素、循環経済、分散型社会への移行を進め、ポストコロナの経済社会の再設計を各所と連携して進めてゆく必要がある」と語った。”

“来る9月、小泉環境相は来年に延期されたCOPの締約国が参加するオンライン会議を自らの呼びかけで開催する。環境に重点を置きながら、持続可能な社会・経済を構築する復興方針「グリーンリカバリー」をどのように実現するかを参加国が共有する予定。小泉環境相は気候危機宣言を出したことを皮切りに、日本版グリーンリカバリーの基盤を築いていく考えで、政府全体で気候危機対策を勧められるように努めたいと話した。”

環境省の「気候危機宣言」や、小泉環境相が色々と思いを語ることは結構なことですが、環境省の気候危機宣言には実際の宣言文がなく、今後検討すると言われると、なんだか肩透かしを受けたような気がします。理念はもちろん大切です。しかしその理念を実現する具体策やアクションプランが伴わなければ、理念だけでは役に立ちません。具体的に何かを実行する場合には、色々な関係先との調整が必要になることは理解できます。しかし「気候危機」は人類が直面している危機であり、世界中の人々がその具体的な対策を実行に移そうとしています。関係先との調整が優先するのではなく、多少の軋轢は覚悟してでも、やるべきことを実行してゆかねばなりません。日本にはそのための資金も技術力もあります。手をこまねいていては世界の批判を受けることになりますし、何よりも、将来世代へ引き継ぐべき地球環境の保全が遅れてしまうことになります。

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