号外:米美術館3割が閉館の危機、感染症の影響が長期化、収蔵品売却も

ファッションに関係する話題ではありませんが、広く「文化」が危機に直面しているという意味で、考えさせられる記事です。

2020年8月1日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

米国で美術館や博物館など文化施設の経営悪化が深刻になっている。米国の美術館は8割がNPOで、入館料や寄付金が運営資金の柱だ。新型コロナウイルス感染症の影響で収入源を絶たれ、恒久的な閉館や収蔵品の売却を迫られる恐れがでている。”

米国文化施設の収入源

“ペンシルバニア州フィラデルフィアの科学博物館、フランクリン・インスティチュートでは年間の運営資金3600万ドル(約38億円)の6割を入館やイベント収入で稼ぐ。7月、都市封鎖が始まってからおよそ4ヶ月ぶりに再開館したが、人数制限や特別展の延期で今期の収入は大幅減が確実だ。3月に従業員を35%減らすことを決めたが、追加削減は避けられないという。”

“全米各地で都市封鎖が始まった3月以降、各地の施設は何とかコストを切り詰めようとしてきた。ニューヨークのメトロポリタン美術館は4月、80人の削減を決めた。それでも2020年度の運営予算は1億5000万ドルの不足を見込む。同市のグッゲンハイム美術館も92人の削減に踏み切った。”

ニューヨークのメトロポリタン美術館

“文化施設の財政危機は世界的な問題だ。ユネスコと国際博物館会議(ICOM)が5月に発表した調査によると、感染症の影響で世界の美術館・博物館の9割にあたる8万5000施設が一時閉館。ICOMなどはその1割が「恒久的な閉館になりかねない」と予想した。”

“米業界団体のアメリカ博物館同盟(AAM)は、感染症が影響した閉館による業界全体の損失が1日あたり3300万ドルと試算する。6月に750館を対象にした調査では「2021年秋までに恒久的な閉館に追い込まれるリスクが非常に高い」または「開館し続けられるか分からない」という回答が3割を超えた。AMMは7月、美術館の直接・間接を含めた雇用は73万人、経済効果は年間500億ドルに上るとして、米議会に60億ドルの緊急支援を求める嘆願書を提出した。”

各館のトップが加盟する米国美術館理事協会は、これまでタブー視してきた運営資金確保のための美術館の収蔵品売却を、コレクション保全など特定の目的に限り、2年間は容認する方針を打ち出した。協会は「決して資金調達のための売却を奨励する意図はない」と強調する一方、感染症は「業界にとってまさに未曽有の危機」と危機感を示している。”

“美術館側も手をこまねいているわけではない。イリノイ州シカゴ郊外のデュパージュ子供美術館は6月、例年は対面で開く資金集めのイベントをバーチャルで開催。リピーター来館者の子供が参加したネット募金キャンペーンや富くじ販売など工夫の結果、目標額を6万ドル上回る寄付金集めに成功した。ミシガン州デトロイトでは、近隣の美術館やアートギャラリー56施設が参加するネットイベント「アートマイル」を立ち上げた。7月末から1週間立ち上げる特設サイトでは、アート作品の販売や美術館のバーチャルツアー、資金集めのイベントなどを企画する。先行きの見通しが立たない中、生き残りに向けた手探りの取り組みが始まる。”

今回の感染症では、音楽や美術、演劇やスポーツなどなど幅広い文化的な活動をされている方々も大変なご苦労をされています。先日、十分な感染症対策を実施して、久しぶりに歌舞伎公演が実現したというニュースを見ました。限られた観客数だったと思いますが、劇場から出てこられた方が「素晴らしかった」とおっしゃっていたのが印象的でした。アメリカのメトロポリタン美術館、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やスミソニアン博物館(ワシントンDC)は以前に家族と訪れて、その規模の大きさと収蔵品の素晴らしさに圧倒されました。子供たちにとっても得難い経験だったと思います。やはり、このような文化材や施設は人々にとって欠くことのできない財産だと思います。経営悪化で閉館なんてことにならないように何とか頑張っていただきたいと思います。ところで、日本の文化施設は大丈夫でしょうか?あまりニュースにはなっていないようですが、少し心配になってきました。

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