号外:アップル、2030年までにサプライチェーンで100%カーボンニュートラル達成へ

私は技術者ではないので、下記の記事にある目標の達成を、アップルが個々に具体的にどのように進めてゆくのかを想像することはできません。しかしアップルがこの目標を達成することは、地球環境への大きな貢献になることは間違いないと思います。

2020年7月23日付けSustainable Brands Japanに掲載された記事より、

アップルは7月21日、サプライチェーンや製品ライフサイクルにおける温室効果ガスの排出量を2030年までに実質ゼロにするカーボンニュートラルを目指すと発表した。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の掲げる2050年目標よりも20年前倒しでの目標達成を掲げた。同年までに全製品が気候変動に及ぼす影響は実質ゼロになる見込み。すでに日本企業を含む71社のサプライヤーが同意している。ティムクックCEOは「企業には、より持続的な未来を構築するために取り組む大きな責任がある。気候変動対策はイノベーションや雇用創出、持続的な経済成長を生み出す基盤になる。この目標が波及し、大きな変化が生まれることを期待する」と決意を語っている。”

“新型コロナウイルス感染症の拡大という危機に直面する中、手遅れや失敗が許されぬ気候変動への取り組みが加速している。アップルが新たなコミットメントを明かした同じ日、マイクロソフトやナイキ、スターバックス、ユニリーバなど9社が連携し、排出量を実質ゼロにするグローバル経済への移行を加速するためのイニシアティブ(新たな取り組み)「Transform to Net Zero」を設立したことを発表した。”

アップルが利用する風力発電

アップルは2018年、全世界の事業運営で使用する電力を100%再生可能エネルギーに切り替えた。サプライチェーンにおいては、2015年に「サプライヤー・クリーンエネルギー・プログラム」を掲げて以来、再生可能エネルギーを推進してきた。電力には各国独自の規制・ルールなどがあることから、同社は自社で実施した各国でのカーボンニュートラルの取り組み方法などをサプライヤーにも共有してゆく方針だ。”

同社のサプライチェーンにおける温室効果ガスの排出量は全排出量の4分の3を占め、そのほとんどが部品製造に使用する電力によるものだ。現在、17ヶ国71社のサプライヤーが2030年までに100%再生可能エネルギーを使用することに同意。日本企業ではセイコーアドバンス、イビデン、日東電工、太陽ホールディングスなどが含まれている。これにより、将来的に7.8ギガワットの電力を再生可能エネルギーで賄う計画で、年間1430万トン以上のCO2排出を削減することができる見込み。”

同社は今後、2030年までに現在の温室効果ガスの排出量を75%削減し、残り25%は技術革新によって削減する計画。10ヶ年の「アップル・クライメイト・ロードマップ」によると、「低酸素の製品デザイン」「エネルギー効率の拡大」「再生可能エネルギー」「工程と材料のイノベーション」「(森林や生態系の回復・保護による)CO2の除去」の5つを柱に計画を進めていく方針だ。昨年、アップルが発売したiPhoneやiPad、Mac、アップルウォッチといったデバイスは、レアアースを含め100%リサイクルした材料を使って製造されているが、今後も低炭素の再生材料を使い、画期的な方法で製品をリサイクルし、エネルギー効率の高い製品設計を進めていくという。”

“同社はこういった気候変動対策と同時に、サプライチェーンと環境問題によって過度に影響を受け脆弱な立場におかれているマイノリティなどのコミュニティの支援も行う考え。背景には、ジョージ・フロイド事件の影響を受け、米国を中心に企業が人種差別の解消・人権への取り組みを強化する動きがあるためだ。また人種差別による被害も環境問題による被害も、有色人種やマイノリティ、途上国など社会的に脆弱な立場の人がより影響を受ける。アップルのリサ・ジャクソン環境・政策・社会イニシアティブ担当バイスプレジデントは「制度化された人種差別と気候変動は個別の問題ではなく、個別の解決策で扱われるべきではない。私たちはより環境に優しくより公平な経済環境を築き上げる歴史的な局面を迎えている」と語っている。”

“日本でも気候変動による自然災害の激甚化が深刻になっているように、気候変動は新型コロナウイルス感染症禍でも変わらぬ脅威として存在する。IT企業では、マイクロソフトが今年1月、2030年までにサプライチェーン・バリューチェーンを含む事業全体において「カーボンネガティブ」の達成を目指すと発表した。これは温室効果ガスの排出量以上に削減量を増やすというもの。同社は2030年までに温室効果ガスを半減させるほか、テクノロジーの開発・投資などによって目標とする削減量を目指すという。このように、現在、グローバル企業の中には自社が環境に与える悪影響をゼロにするだけでなく、地球が修復・再生できるようそれ以上の還元をしようとする動きも生まれている。

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