見限られた日米の名門アパレル

これまでにもこのHPで触れてきましたが、世界中でアパレル企業が苦闘しています。業界特有の構造的な問題があるところに、新型コロナウイルス感染症が襲い掛かりました。そして、耐えきれずに破綻する有名企業が続出しています。

2020年8月17日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

「レナウン、さよならセール」、8月1日、東武宇都宮百貨店(宇都宮市)で、紳士服「インターメッツォ」や婦人服「シンプルライフ」などレナウンブランドの店が最終セールを終えると一斉に閉店した。だが、レナウン本社の担当者はセールはもちろん閉店さえ知らなかった。かつて売上高で日本一のアパレルだった名門のレナウンだが、いまやリストラ策の決断はおろか、重要情報の共有すらままならない。

レナウン アーノルドパーマー

“東京地裁に民事再生法の適用を申請し、事実上破綻した5月15日の直後、レナウン首脳陣は「自分たちは100年超の歴史を誇る名門アパレルだ」、再建のスポンサーはすぐに見つかると楽観視していた。スポンサー候補には全てのブランドと雇用の維持が前提と伝えたが、その自信と世間の評価には大きな開きがあった。”

“かつて20~40代の憧れだった紳士服「ダーバン」やインターメッツォ、シンプルライフの主要顧客は60代になった。ブランド力が落ちる中、強気な価格設定も変わらなかった。首脳陣は複数の会社に接触したが、いずれも成果は出なかった。その後再建の主導役は首脳陣から管財人に代わったが、それでもうまくいかない。スポンサー探しの期限だった6月末を過ぎ、結局最後はブランドや子会社を切り売りする「解体」しかなかった。

“大半のブランドは廃止し、「ダーバン」や「アクアスキュータム」などは8月中旬に入札をかけて売却する。連結で約900人いた従業員は300人前後に減らす。8月17日に予定していた東京地裁への再生計画の提出は来年2月まで遅れる見通しだ。ブランド売却は8月末までにメドがつくと思われるが、レナウンの看板は消えることになる。”

“7月、米国でも紳士ブランドとして200年以上スーツを提供していた名門ブルックス・ブラザーズが経営破綻した。保守的なスタイルと機能性を備えたブルックスのスーツはオフィス勤務者に支持されたが、変化への対応が遅れた。1990年代以降、ジャケット不要の「ドレスダウン」が普及しスーツ離れが広がった。調査会社によれば、米国のスーツの売上高は2012年に約25億ドル(約2600億円)あったが、2020年には21億ドルまで減る見通しだ。ブルックスもポロシャツなどカジュアル品を増やしたが、なかなかファンには受け入れられなかった。ネット通販への対応も遅れた。とどめを刺したのは新型コロナウイルス感染症だが、破綻は必然だったと言われている。”

“6月、女性向けブランド「セシルマクビー」を運営するジャパンイマジネーション社は、出店する商業施設の責任者から「これ以上賃料は下げられません」と伝えられた。同社は、7月20日、90年代から10~20代女性のあこがれで平成アパレルの代表格だったセシルマクビーの全店閉店を発表した。2006年度のピークから時代の変化に合わせようともがき続けたが販売減は止まらない。そこに新型コロナウイルス感染症が襲った。もはや賃料削減など小手先では対応できなかった。規模が大きいだけのブランドでは、もう生き残れなくなっている。

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