服を構成する部材と素材:リサイクルを困難にしている理由①

ミシンで縫製

実は色々な事情で衣料品はリサイクル(廃棄後の再資源化)が難しい製品です。2000年に「循環型社会形成基本法」が公布されました。その枠組みのなかで「容器包装リサイクル法」、「家電リサイクル法」、「建設リサイクル法」、「食品リサイクル法」、「自動車リサイクル法」等があり、それぞれの分野でリサイクルを促進する体制が組まれています。しかし「繊維製品リサイクル法」というのは今日現在制定されていませんし、その予定もないようです。その理由のひとつが、衣料品には色々な材料が使われ、その組み合わせで生産されているということです。

一般的に衣料品に使われている材料を列記してみます。

①表地:色々な素材が織物、編物として使われています。
 ウール100%、綿100%、麻100%、絹100%、ポリエステル100%、
 ウール/ポリエステル複合、綿/ポリエステル複合、
 その他にも合繊(アクリル、ナイロン)、化繊(レーヨン、アセテート)等
 様々な組み合わせがあり千差万別です。

②裏地:綿、ポリエステル、アセテート等が主として使われます。

③芯地(型崩れを防ぐ部材で織物、不織布):ウール、綿、ポリエステル等

④ボタン:木製、貝殻、各種プラスティック等

⑤縫い糸:綿/ポリエステル棍棒混紡、ポリエステル100%等

⑥その他:ファスナー(プラスティック、金属)、金属スナップ・フック、
 ストレッチテープ、各種紐、刺繍糸等

まだまだ他にもありますが、書ききれないのでこのくらいにしておきます。これらの材料が組み合わされ、縫い合わされたものが「服」です。これらの部材、素材の組み合わせで様々な服が企画されています。その多種多様な製品の中から私たちは自分が気に入ったものを選んでいるのです。この服という製品の多様性が、実は衣料品のリサイクルにとって大きな障害となっています。

リサイクル(廃棄後の再資源化)の前提は、素材の分別(同一素材を集めること)です。分別しなければ再資源として利用できません。衣料品の場合、不可能ではありませんが、この分別に大変手間がかかります。縫い合わされた部材をほどいて区分することを想像してみてください。ボタンといっても素材は様々です。表地については100%素材であればまだ良いですが、実際は様々な素材が様々な割合で複合されていて、それを素材毎に仕分けることは実際問題としてほぼ不可能です。皆さんもよくご存知のペットボトルの分別回収(洗う、キャップを別にする、包装を剥がす、つぶす)やアルミ缶の分別回収(洗う、つぶす)と比べると、いかに大変な作業になるかご理解いただけると思います。

また「服」の素材分別については、消費者が個人的に作業できる部分はほとんどありません。それなりの技術と設備をもった企業で作業することが必要で、そのための費用が発生することになります。この素材分別の困難さが、衣料品のリサイクルが進まないひとつの理由です。実は「素材分別」の前に、「廃棄された衣料品の回収」というハードルがあるのですが、この点については別の回に譲ります。

古着の回収

衣料品を製造・販売する企業もリサイクルの必要性に無関心ではいられません。一部の企業では自社の製品に限って販売店の店頭で回収し、リユースやリサイクルする試みを実施しています。いくら自社の製品であっても、回収したものをリユースに回すものとリサイクルに回すものを区分することは簡単ではありません。使用後の衣料品ですから、汚れているものもあり、破損しているものもあります。ポケットに異物が入っていることもよくあるようです。これは人の手で区分するしかありません。ようやく区分ができたとしても、リサイクルに回るものについては前述の素材分別の作業が必要です。この段階になれば、その技術と設備を持っている企業に依頼することになります。リユースできる製品については、国内で流通させるのではなく、海外の古着を必要とする人々に届けることが主流のようです。これはある種の社会貢献ですが、ここでもやはり費用が発生します。自社で回収した自社製品の古着を、改めて自社の販売ルートに乗せるという話は聞いたことがありません。

サステイナビリティを考えた取り組みには色々な手間(費用)が掛かりますが、これはいったい誰が負担すべき費用でしょうか。衣料品を製造・販売する企業は、昨今のCSR経営の観点から、また自社の環境配慮企業としてのブランドイメージ向上の観点から、自社製品に限定した回収、リユース、リサイクルに取り組むかもしれません。しかしこれだけの手間(費用)がかかりますから、企業としては限定的な対応になりがちです。自社品においてもこのような状況ですから、まして他社品を含めた衣料品全般のリサイクル事業は非常に難しいものになります。ここにも衣料品のリサイクルが限定的でなかなか進まない理由の一端があります。

今のところこれらの費用を社会全体として負担してゆく仕組みはありません。「家電リサイクル法」や「自動車リサイクル法」はあるのに「繊維製品リサイクル法」がないということは、この現実を表しています。衣料品は身近な必需品ですが、使用後のリサイクルを考える場合には非常にやっかいな製品なのです。残念なことですが、衣料品は捨ててしまえばただのゴミで、ゴミであれば焼却してしまう方が簡単だということになりがちなのです。

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