アパレル業界の「半年サイクル」が通用しなくなった理由①

多くの報道からもわかるように、アパレル業界全体は非常に厳しい状況に置かれています。下記はその背景を分析した記事ですが、いくつかの重要なポイントを指摘しています。古いビジネスモデルが機能しなくなり、新しい時代に相応しいビジネスモデルが求められていますが、まだまだ試行錯誤を繰り返している状態です。力尽きて倒れる企業もあります。これからのアパレル産業は、どこへ向かうべきなのでしょうか。

2020年9月23日付け日経クロストレンドに掲載された記事より、

“新型コロナウイルス感染症の影響によるファッションビルの不振、アパレル企業の倒産や業績悪化が報じられている。だが理由は感染症の影響だけではなく、その兆しは以前からあった。「既存のシステム」が時代とズレていることに気づきながら、まだしばらくは成立するだろうという甘い見通しがあった。感染症の影響でそれが一気に現象化し、対処せざるを得なくなったというのが実態だ。”

“ファッション業界は半年をワンサイクルとしたビジネスの仕組みを持っている。ファストファッションもこの仕組みの中で、大車輪を回すビジネスモデルとして多くの企業が取り入れてきた。しかしそれが一部で過剰化し、消費者のニーズから乖離してしまった結果、業界を回していた半年単位のファッションサイクルを見直さなければならなくなった。では、半年サイクルそのものの転換を消費者が求めている背景は何なのか。大きくは「消費の成熟化」と「サステイナビリティ」が挙げられる。

“まずは「消費の成熟化」。経済が右肩上がりに成長している時代は、新しいことや流行の先端にあることが価値を生んでいたが、今はそうではなくなっている。この傾向は、バブルがはじけた1990年代初頭からじわじわと始まり、リーマンショックで勢いがつき、東日本大震災を経てさらに強まっていて、今や消費の底流をなす大きな潮流と言っていい。消費者はトレンドという名のもと、半年ごとに商品がコロコロと移り変わっていくありように価値を感じない。「おかしい」「どこか変だ」と疑問を抱いている人が少なくないのだ。”

“一方、送り手サイドであるアパレルは、こういった趨勢に気づきながら、半年を土台としたサイクルをさらに細分化し、店頭に並ぶ服を週単位で変えるという従来のシステムを続けてきた。課題として向かうべきはファッションサイクルのありようなのに、「売れそうなもの」を作り、「目先の売り上げ」を確保する方向に走って行ったのだ。その結果、個性と言う価値が削ぎ落され、似たような商品ばかりが並び、さらなる客離れをまねいていった。そんな悪循環が起きている。

“もうひとつの要因は「サステイナビリティ」。ここには地球環境全般と社会全体、双方における持続可能性が含まれる。まず地球環境への配慮ということで振り返ると、萌芽は1990年代に入った頃に遡る。当時は「エコロジー」という言葉が多用されていた。ファッション業界でも「エコファッション」として登場してはいたものの、表層的な環境意識にすぎず、ナチュラルな色や自然素材を使うといったレベルだった。”

“それが地球温暖化の影響が深刻になり、今や環境への配慮は差し迫った課題になった。プラスティックごみを減らす、再生可能な素材を使う、使い捨てしないように配慮するといった行為が、日常的なレベルで行われるようになってきた。それとともに、短期間で使い捨てにするのではなく、1つのモノを長く使いたいという意識は、人々の中に浸透しつつある。そいう中にあって、流行だから半年で着倒し、次のシーズンはまた新しい服を手に入れるという考えは通用しなくなっている。半年ごとに流行=トレンドを提案し続けるファッションのありようにはもはや説得力はない。

“さらに言えば、これからの時代はサーキュラーエコノミー(再生し続ける経済環境)の概念なしに、企業が存続することが難しくなっていく。なぜなら、消費者が商品を選ぶ際のポイントとして、その企業がサーキュラーエコノミー的な視点を持っているかどうかという要素が入ってくるからだ。そうなると、短いサイクルで市場を回しているファッション産業への疑問、すなわち、モノ作りから販売までをグローバル規模で行うことで労働力を搾取していないのか、物流コストが過剰ではないか、廃棄する服はもったいなくはないかなど、山積みになった大きな課題が顕在化し、否応なしにその解決に向かっていかなければならなくなる。

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