ファブリックトウキョウ、コロナ禍でジャケットが売れた!

顧客から集めたきめ細かなデータを商品に反映させた、ビジネス用カジュアルジャケットのオーダーメードです。感染症の影響でテレワークが拡大、定着しつつありますが、顧客の希望を巧みに捉えて販売を伸ばしています。事業環境が大きく変わる中でも、新しいビジネスチャンスが生まれています。

2020年9月29日付け日経ビジネス電子版に掲載された記事より、

コロナ禍での象徴的な苦境業種になっているスーツ業界。オーダーメードスーツを中心に手掛けるファブリックトウキョウ(東京・渋谷)が3月に発売したビジネス用カジュアルジャケットが売れている。当初は19,800円の3種類からスタートしたが、反響の良さを受けて生地や価格帯の異なるものを徐々に増やし、現在は秋冬用も含めて39種類を展開する売れ筋として定着した。”

Fabric Tokyoの店舗

“コロナ禍で浸透したテレワークに合わせて、家での仕事着として提案した。カジュアルジャケットを購入した顧客は「家の中でスーツまでは着たくないが、カジュアルすぎてもオンオフが分からなくなる。あえてカジュアルジャケットを羽織ることにしている」と話す。”

“ファブリックトウキョウは顧客の職種や年齢といった属性、好みをデータとして集めるだけでなく、商品を通じて何を感じているのかという曖昧になりやすい情報を拾い続けている。リアル店舗から毎日、来店した顧客情報をまとめた日報が上がってくるほか、注文ごとに詳細なアンケートを実施している。社内システムの顧客情報の管理画面には自由記述蘭があり、接客時の会話内容などを書き込め、商品企画部を中心に全社員が閲覧し、市場の最新ニーズを把握できる。”

“ヒットしたカジュアルジャケットはもともと、2019年後半から業界で話題になりかけていたビジネスカジュアルの流れから企画されたものだ。テレワーク時の服装としても需要があることを、リアル店舗での会話や注文時のアンケートによるデータから、感染症が広がる早い段階で確認していたという。

オーダーメイド・ジャケット

“発売したジャケットはデザインや色が決まっている一方、それぞれの体形に合ったサイズにし、ポケットなどを使用シーンに合わせたデザインにできるオーダータイプ。カジュアルなパンツに合わせやすい風合いで、肩パッドを入れておらず、動きやすさや機能性を重視している。ビジネスカジュアルと打ち出しながら家庭で洗濯できるものが多く、在宅勤務で求められる手軽さとビジネススタイルの両立ができる印象を与えている。テレワークの流れが確実になったころからは、自社サイトでもテレワークの用途を全面的に押し出していった。さらに感染症の影響で店舗が営業自粛を余儀なくされたことを受け、自宅でも採寸できるサービスを開始。これも追い風となった。”

“多くの企業でテレワークが浸透する一方、一定の出勤日を設けるなど、感染症のもとで働き方も多様化している。また感染症を経て企業側のデジタルリテラシーが向上し、口コミやSNSを多く利用した顧客主体のマーケティングも進んできている。オーダーメードを手掛ける企業は、ビジネスのなかに消費者を取り込む姿勢をそもそも持っているので、顧客主体のビジネスを進めやすい側面もある。

感染症の影響もあり、今まで以上にオンラインでの情報を活用したマーケティングが大切になってきています。また、均質な大量生産品を安価に広範囲に供給するビジネスモデルでは、サプライチェーンの各段階で色々なロスが発生します。顧客の希望に合わせて、オーダーメードで生産するビジネスモデルでは、それなりの手間は掛かりますが、ロスを少なくし、顧客満足度を向上することができます。様々なテクノロジーを活用することで、価格(コスト)や納期を適正化する工夫もできるでしょう。ビジネスの持続可能性を考える際には、両方のビジネススタイルのバランスが重要になるのだと思います。

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