号外:車の動力源もCO2排出なし、経産省の目標
日本は、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを宣言しました。自動車は国内のCO2排出の2割弱を占めるといわれています。目標達成のためには自動車からのCO2排出を削減しなければなりません。電動車(EV等)の普及が必要ですが、CO2の排出は運転時だけではありません。総合的なエネルギー政策のバックアップが必要です。
2020年12月11日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
“経済産業省は2050年に自動車の製造から廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体でCO2排出ゼロを目指す。電動車の普及と同時に、動力源となる電力で再生可能エネルギーの拡大が不可欠になる。規制など目標達成の取り組みは年内にまとめる温暖化ガス排出削減の実行計画に盛り込む。”
“自動車は国内のCO2排出の2割弱を占め、脱炭素のカギを握る。経産省は12月10日、メーカーの幹部や有識者らを集めた検討会で2050年排出ゼロに向けた議論を始めた。EVでは「全個体電池」など次世代技術の開発促進を論点とした。中国企業が優位に立つ蓄電池やモーターで海外依存を招かない供給体制の確保なども課題とした。EVは電池を含む製造工程でガソリン車の2倍近いCO2を排出するとされる。会合では「エネルギー政策も含め検討する必要がある」との意見が出た。”
“2021年に見直すエネルギー基本計画で再生可能エネルギーの発電比率目標をどこまで高めるかが焦点になる。現在は2030年度に22~24%との目標を掲げる。2019年度は18%にとどまった。4割前後に達する欧州主要国との差が大きい。今後、2030年代半ばに国内の新車をすべて電気自動車(EV)などの電動車とする目標を掲げる方向で調整する。販売目標の未達企業が達成企業から排出枠を買って補う取引制度も検討する。”
“走行時だけでなく製造から廃棄に至る「車の一生」を通じてCO2排出量をいかに抑えるかが重要になる。電動車への移行では電源の見直しを並行して進める必要があり、再生可能エネルギーの普及拡大や水素の有効活用がカギを握る。経産省は「ライフサイクルでのカーボンニュートラル」実現のために、燃料の製造や輸送、使用などの各段階の環境負荷に配慮する。ガソリン車は油田からの原油採掘、ガソリンの精製、走行時などにCO2を排出する。走行時は温暖化ガスを排出しない電気自動車(EV)も動力源の電気が問題になる。石炭や液化天然ガス(LNG)などによる火力発電だと電動車でも排出をしていることになる。”
“日本は発電量に占める火力の比率が8割弱に及ぶ。経産省は12月10日の会議で再生可能エネルギーの普及や、製造時にCO2を出さない「カーボンフリー水素」の導入拡大を今後の取り組み例としてあげた。再生可能エネルギーについては最大の主力電源に育てる考えを示している。課題が多いのは水素だ。製造時に化石資源を使う水素は「グレー水素」と呼ぶ。水素をエネルギー源とする燃料電池車(FCV)は走行時にはCO2を出さないものの、水素の製造段階で排出していれば、ライフサイクルで脱炭素とはいえない。再生可能エネルギーから作る水素は「グリーン水素」と呼ぶ。この場合でも再生可能エネルギーの普及拡大は欠かせない。”
“自動車メーカーも既に走行時以外の温暖化ガス排出に目を向け始めている。トヨタ自動車首脳は「走行時の議論だけでは真の脱炭素は実現できない。電源構成などエネルギー計画も一体で議論して欲しい」と政府関係者に説いてまわる。トヨタ首脳はライフサイクルでの排出ゼロを目指す目標について「やれるめどがあるわけではなく、やらなくてはいけない」と話す。”
コロナ禍からの復興において、欧州を先頭に「脱炭素」への取り組みが加速しています。中国、日本も、欧州に続いて「温暖化ガスの排出実質ゼロ達成」を宣言しました。アメリカも来年初頭のバイデン新政権の発足によって、同じ方向へ軌道修正がなされると思われます。ようやく各国が協力して「脱炭素」に取り組む体制が整うことになります。トヨタ首脳の言葉にもあるように「やれるめどがあるわけではなく、やらなくてはいけない」課題です。地球温暖化、気候変動を抑制して、持続可能社会を築き、将来の世代のために安定した地球環境を維持してゆかねばなりません。