号外:フクシマの教訓-②

“原発の稼働が、主に経済的な理由で停止している場合がある。米国のようにCO2排出に費用がかからない国では、その排出をゼロにすることの利点が市場に表れてこない。それが原子力に不利に働いている。この状況は是正すべきだ。政治的な理由で原発が停止している場合、論調を変える責任はとりわけ環境保護を強く訴える「緑の政治家」にある。原子力発電の縮小を急ぐと、あらゆる環境対策の中で最も意義のある施策に取り組む世界の歩みを強引に止めることになる。

福島原発事故の教訓から、原子力規制機関の独立性を高める動きが生まれた。一部の国では、この動きが、既存の原発を稼働させ続けよとの主張に裏付けを与えてきた。英国は2011年以降、規制当局に新たな裁量権を与えた。日本も同様だ。新たな監督機関は、停止中の原発の運転再開について、政府が望むであろう以上に厳しく対応している。そうあってしかるべきだ。日本では、原子力の有用性に対する信頼を取り戻すことがどの国よりも必要なのだから。

“このことは、原子力が抱える最大の弱点を示唆している。民主主義諸国では、規制と国民の反感ゆえに新規の原発建設が難しく、結果としてコスト高になる。そのため、この技術は次第に独裁国家の領分となってきている。独裁制はまさに、適切な規制が最も行われそうにない体制だ。中国の原発建設計画は福島の事故のあと中断していたが、現在は、石炭依存から脱却する取り組みの一環として逆に加速している。中国の原子力による発電量は2019年、2011年当時の4倍に拡大した。中国は現在16基の原子炉を建設中で、それ以外に39基を計画している。新たな原発の導入を望む国は、中国製とロシア製に目を向ける。

欧米諸国の政府は気候変動対策としてエネルギー分野の研究開発を推進するにあたって、同時に、原子力に正当な役割を担わせるべきだ。原子力をめぐる新たなアプローチの中には、実に魅力的なものがある。小型炉への関心は高い。単価を抑えることができる。小型でも数を集めれば従来の原発の代替となり得る。必要な地域に1つずつ加えて発電量を徐々に増やすこともできる。古い化石燃料発電所を改造するのに利用できるかもしれない。”

“原子力発電には、津波に匹敵する大きな欠点がある。だが、中国で現在建設中の原発は22世紀まで使われる。なくなればいいと願うだけでは、なくすことはできないのだ。しかも、原子力発電は気候変動との闘いにおいて、極めて重要な役割を担う。原発を忌避するのではなく、賢く利用する。それが福島の教訓である。

みなさんは、どのように思われますか。自分としては、前述の記事に同意する部分が多々あります。その一方で、原発で事故が発生することへの恐怖感もあります。先日、テレビで「フクシマ50」という映画を見る機会がありました。福島第1原子力発電所での事故に際し、まさに命がけで事態の収拾に尽くされた方々の物語です。記事の中では、「福島で失われた命のほぼ全ては津波によるもので、放射能によるものではなかった」という記述がありますが、放射能によって人命が失われる悲劇はギリギリのところで回避されたのです。また、このところ気になっているニュースがあります。国内では原発の新設や再稼働が進んでいませんが、このため、原発の開発や建設、運転や維持管理などについての技術継承が滞り、このままでは日本の原子力発電に関わる技術や知見が失われてしまうということです。気候変動に立ち向かうため、日本はこれから脱炭素に取り組んでいかねばなりません。今後電力需要は増加してゆきます。再生可能エネルギーの普及拡大はもちろんのことですが、発電量が不安定であるという課題があります。原子力発電というCO2を排出せずに常時安定稼働できる発電技術を利用せずに、電力の安定供給は実現可能なのでしょうか。それとも、社会として、電力の高コスト(生活コストと産業コスト)、ないしは節電による不便な生活をある程度許容してゆくことになるのでしょうか。私たちは非常に大きな決断をしなくてはならないのだと思います。この問題を避けて通ることはできません。

Follow me!