号外:2020年、世界のCO2排出量は5.8%減少
2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大で、世界中で人とモノの動きが滞り、経済活動は停滞しました。その結果、年間での世界のCO2排出量は減少しています。ただ年末にかけて経済活動は徐々に再開され、それに伴ってCO2の排出も増加傾向です。感染症についてはまだまだ予断を許す状況ではありませんが、各国でワクチン接種も開始され、経済活動が回復することが期待されています。しかし同時に、経済活動の回復に伴ってCO2の排出量が増加することが懸念されています。このところ2050年~2060年に向けて世界で脱炭素を目指す動きが広がり、具体的な目標も掲げられています。しかし、期待される技術革新や産業構造の転換が見込み通りに実現できるかどうかは、不透明なところもあります。先ずは足元から、一年一年の排出量削減を地道に積み重ねてゆくことが大切です。
2021年3月2日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
“国際エネルギー機関(IEA)は2日、2020年のCO2(エネルギー起源)の排出量が前年から5.8%減ったと発表した。新型コロナウイルスの拡大で経済活動が停滞したのが響いた。2020年12月には排出は前年比増加に転じ、IEAは各国の排出削減の取り組みが不十分と警告した。”
“IEAによると、減少幅は第2次世界大戦後で最大。2019年から20億トン減り、2020年の世界の排出量は315億トンになった。コロナ禍で人やモノの移動が鈍り、運輸部門の排出が大きく減ったのが主因だ。エネルギー起源CO2は燃料の燃焼や、電気や熱の使用によって排出されるCO2で、温暖化ガス全体の7割前後を占める。”
“IEAが2020年の排出量を月毎に分析したところ、新型コロナウイルス感染症の影響が世界に広がった4月に前年同月比15%減を記録した。その後は経済活動の再開とロックダウンの緩和などを受け、減少幅は徐々に小さくなり、12月には2%の増加に転じた。IEAは声明で多くの国の排出の現状について「(新型コロナウイルス感染症の)危機前の水準を上回っている」と警告、「排出の反発は2021年の著しく増加するリスクを示している」と訴えた。”
“地域別でみると、先進国が10%減った一方、新興・途上国は4%減だった。米国や欧州連合(EU)は10%前後落ち込んだほか、日本は6.5%減った。インドやブラジルも減ったが、中国は0.8%増と主要国で唯一増加した。分野別では運輸部門の排出量が14%減った。新型コロナウイルス感染症で人の移動や物流の動きが鈍り、石油の消費量が大きく落ち込んだ。電力部門は3.3%減少した。電力需要が落ち込んだことに加え、総発電量に占める再生可能エネルギーの割合が27%から29%に増えた。”