米税関、ウイグル問題でユニクロシャツの輸入差し止め

米政府は2021年1月から中国の新疆ウイグル自治区で生産された綿製品の輸入を禁止しています。それまでは同地区の特定企業が関わった製品の輸入を止めていましたが、中国共産党による少数民族の強制労働を理由として、その対象を同地区全域に広げました。米税関・国境取締局(CBP)は、「強制労働が行われている合理的な情報がある」としています。ウイグル自治区は綿製品で世界有数の産地で、日米欧の衣料品メーカーが販売する製品も関わっています。

2021年5月19日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

“米国の税関当局が、ファーストリテイリングが運営する「ユニクロ」のシャツ輸入を差し止めていたことが5月19日、分かった。中国・新疆ウイグル自治区の団体が関わった衣料品などの輸入を禁止する措置に違反したとしている。人権侵害が取り沙汰されるウイグル問題が、日本企業にもリスクとして浮上してきた。”

“差し止めは米税関・国境取締局(CBP)の5月10日付の文書で分かった。ユニクロの男性用シャツを1月、ロサンゼルス港で押収した。中国・新疆ウイグル自治区の団体「新疆生産建設兵団(XPCC)」によって製造された疑いがあると指摘している。文書によるとユニクロ側は「製品に使用している綿はオーストラリア、米国、ブラジルを産地としている」と主張。ウイグルとは関係がないなどとして禁止措置の解除を求めた。一方、CBPは「生産工程と生産記録のリストに不備がある」などと指摘した。強制労働によって作られたものではないと証明できる十分な証拠を示していないと判断し、解除を拒否したという。

“ファーストリテイリングは5月19日、米当局の決定は「非常に遺憾」だとするコメントを出した。「生産過程で強制労働などの問題がないことが確認されたコットンのみを使用」していると説明した。同社の北米売上高は全体の数%にとどまり、差し止めによる事業への直接的な影響は軽微とみられる。2020年8月、同社は新疆ウイグル自治区に取引先工場はないとする声明を出していた。柳井正会長兼社長は2021年4月の会見で「新疆綿」の使用に関する質問に「ノーコメント」と回答した。

柳井氏は4月の会見で、「全部の工場を監視している。人権問題があれば取引を即座に停止する」とも述べています。中国でのユニクロ事業の売上高は2021年度上半期で3108億円(前年同期比15%増)と、国内事業の伸び(6%増)を大きく上回り、ユニクロにとって中国は非常に重要なマーケットです。同社が世界的に競合するH&M(ヘネス・アンド・マウリッツ)は、新疆ウイグル自治区で生産されたコットンの調達を中止したことで中国側から猛烈な反発にあい、中国でのEC(電子商取引)サイトなどのビジネスが事実上、難しくなっています。ユニクロにとって、中国は市場であると同時に最大の生産地でもあります。ビジネスは、国際政治情勢の変化から無縁ではあり得ません。バランスを取りながらの難しいかじ取りになるでしょう。これはユニクロに限ったことではありません。

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