新疆綿、ワールドやミズノ使用中止

中国の新疆ウイグル自治区では、世界の綿の2割、中国産綿の8割が生産されていると言われています。その地域で、中国政府による少数民族でイスラム教徒であるウイグル族への人権侵害が懸念されています。欧米のグローバル企業では、関連する中国企業との取引を打ち切る動きがあり、日本のアパレル企業も対応を迫られています。

2021年5月21日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

日本企業の間で中国の新疆ウイグル自治区産の「新疆綿」の使用をやめる動きが出てきた。日本経済新聞の取材に対し、ワールドやミズノなど3社が中止を表明した。ウイグルを巡っては中国政府による人権侵害が取り沙汰されている。使い続ける企業も取引先に問題がないかサプライチェーン(供給網)の確認を徹底するなどとしており、生産や調達で人権に配慮する動きが広がる。

アパレル・スポーツ関連の主な上場企業50社に4月上旬から聞き取り調査し、5月19日までに37社から回答を得た。新疆綿を使っていたのは14社。「調査中」も7社あった。19日にはウイグル問題に関連し、米税関がファーストリテイリングの衣料品輸入を差し止めていたことが明らかになった。回答はこれが伝わる前に寄せられた。”

アパレル主要50社の新疆綿への対応

ワールドは新疆綿の使用を確認できた商品で中止を決めた。同社は「そうしたリスクがある以上、今の段階では控えるべきだ」としている。ミズノとコックスも新疆綿の使用をやめるが、理由は「回答できない」とした。しまむらは新疆綿を使った商品を生産する新疆の工場との取引を当面見合わせる。同社は「(新型コロナウイルスの影響もあり)現地に行って(労働環境などの)実際の状況を確認できない」ためだと説明する。タビオは「使用を減らす」と答えた。

良品計画、ワコールホールディングス、三陽商会、シャルレの4社は使用を続け、強制労働などが確認された場合は取引をやめると答えた。ワコールHDは「強制労働がないようにサプライヤーに求め、自社でも確認している」という。三陽商会は「取引量はごく少量だ」としつつ、「綿花栽培は現地の生活基盤になっている側面もある。どう行動することが企業の社会的責任(CSR)として正しいのか見極めたい」とする。良品計画は「インド産の綿の方が使用量は多く、仮に新疆綿の使用をやめてもビジネスは継続できる」としたうえで、「監査にベストを尽くしており、確認できない状況で中止するのは現地の雇用に影響を与える」と強調した。

新疆綿の使用をやめることには、中国国内で反発を買い、不買運動などの標的になるリスクもある。逆に使い続けることで欧米や日本で批判される恐れもあり、企業は板挟みになっている。企業が人権問題にどう向き合うか、投資家や消費者の目は世界で厳しさを増している。米機関投資家団体ICCRは強制労働に関わっていると思われるとして、ファーストリテイリングなど47社に取引先の詳細な開示を求めた。

“日本でも、金融庁と東京証券取引所は6月に施行する上場企業へのコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)に人権の尊重を求める規定を盛り込む。ウイグル問題に限らず、企業は取引の透明性を高める取り組みを強め始めた。生産履歴の確認を厳格化するなどで外部の目にこたえる。アダストリアは工場における労働環境などの調査結果の公開を検討する。ワークマンは縫製工場に加え、生地などの素材工場も第三者による監査を検討する。

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