Higgインデックス、サプライチェーンの再評価

2021年6月3日付け日経ビジネス電子版に掲載された記事より、

”生産工程での水の使用や、廃棄される売れ残り商品—。ここ数年、アパレル業界では環境負荷に対して厳しい目が向けられるようになっている。Tシャツ1枚に使用される水の量はおよそ2720リットル。綿花栽培は耕地面積3%ほどしか占めていないが、世界で使用される殺虫剤のうち約16%が綿花栽培に使用されているという報告もある。さらには2013年にバングラディッシュで縫製工場の入った商業ビル「ラナ・プラザ」が崩壊事故に見舞われたのを発端として、劣悪な労働環境も取りざたされるようになった。”

”そうした中、環境負荷や労働環境などのパフォーマンスを数値化する「Higgインデックス」という指標を活用するアパレルメーカーやサプライヤーが増えている。この指標は、米サステイナブル・アパレル連合(SAC)が提供する評価ツールだ。環境や社会に与えるインパクトをサプライチェーン全体で評価する国際的な仕組みづくりを目指し、スウェーデンのH&Mやドイツのアディダス、アシックスや東レなど大手のグローバルブランドが採用している。”

Higgインデックスのマーク

”国内アパレル大手アダストリアの子会社であるアドアーリンク(東京・渋谷)も、Higgインデックスを採用する一社だ。2021年3月にサステイナビリティ(持続可能性)の実現を前面に打ち出したアパレルブランド「O0u(オー・ゼロ・ユー)」を立ち上げ、Higgインデックスを基にした環境負荷データを製品ごとに公開し始めた。再生繊維の使用や、廃棄を減らすための小ロット多品種生産、素材のトレーサビリティ確保など、サプライヤーへの要求もこれまでとは異なる内容が多くなる。同社生産管理チームは「実際は糸をどこから買っているのか分からないようなメーカーもまだまだ多い」と指摘する。従来の製品であれば、中国メーカーから生地を調達することが多かったが、オー・ゼロ・ユーでは国内メーカーからの調達割合も増えた。「トレーサビリティの確保は、自分たちが製品に責任を持つという意味でも重要。リスクの回避にもつながる」としている。”

”業界全体でこうした動きが強まれば、必然的に環境対応や情報開示に積極的なサプライヤーの存在感は高まる。繊維商社やサプライヤーからは、環境保護やエシカルに関する国際認証を積極的に取得したことが、国内外での取引拡大につながったという声も聞こえる。国内外のアパレルメーカーにファスナーを提供するYKKのもとにも、取引先であるH&Mや米ナイキなどからHiggインデックスに基づくセルフアセスメントとその結果開示の要望が届いた。中国・アジアの主要工場を中心に2016年からHiggインデックスの活用をスタート。2018年には自身もSACに加盟した。”

”SDGsの推進やサステイナビリティの実現は、大手メーカー単独の力ではなし得ない。サプライチェーン全体をまきこめるかどうかが鍵となってくる。”

米サステイナブル・アパレル連合(SAC:Sustainable Apparel Coalition)は、パタゴニアとウォールマートが連携し、サプライチェーンのサステイナビリティ評価を求めたことを発端とし、2011年にサンフランシスコで設立されました。アパレル世界大手を中心に小売、アパレルサプライヤー、業界団体、NGO、大学などが加盟し、現在の加盟機関数は250社以上に上ります。

Higgインデックスは、SACが提供する、サプライチェーン全体での環境パフォーマンスの測定や評価方法の標準化を実現するためのツールです。下記の3種類で構成されています。

Higg Product Tools:製品を生産するにあたっての環境インパクトを測定することができるツールです。

Higg Facility Toolsサプライチェーン全体での環境・社会インパクトを測定・評価をすることができるツールで、1年に1度は評価してSACの認定をもらう仕組みがあります。

Higg Brand Tools:環境に対して考慮されたブランドが消費者からも求められている今、環境に対してのインパクトや社会的なインパクトを知り、改善ができ、サステイナビリティの情報をステークホルダーに共有できるツールです。

管理できる項目としては以下があります。

環境の観点:GHG(温暖化ガス)エミッション、エネルギー利用、水利用、水質汚染、森林破壊、有害化学物質利用、動物生態系保護

社会的な観点:子どもの労働、差別、強制労働、セクハラ、最低賃金以下での労働、賄賂や汚職、労働時間、安全な労働環境

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