丸井、「売らないテナント」3割に

店舗は試着や商品体験に特化し、販売はネット経由で。インターネットで商品を購入し、その商品が自宅に配送されることが日常となるなかで、丸井グループは、リアル店舗とネット通販が共存する新しい大型商業施設への転換を進めています。

2021年7月13日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

”丸井グループは2026年3月期までに、売り場面積の約3割を「売らないテナント」に転換する。通販など話題のネット企業を誘致し、商品やサービスを体験してもらう場にする。新型コロナウイルス禍で消費のネットシフトが加速している。大型商業施設がライバルのネット勢と共存する先駆けとなる。”

丸井グループの事業内容

”かつて消費の主役だった大型商業施設は苦境にある。百貨店の市場規模はコロナ禍直前の2019年にはピークの6割に落ち込んだ。主力テナントのアパレルは大量生産・大量消費が時代に合わず、若者は流行を素早く反映するネット企業に流れた。リアル店舗で商品を確認し安いネット通販で買う「ショールーミング」も商業施設にとって打撃になってきた。一方でネット通販側もサイトの乱立で認知度をどう高めるかが課題になっている。”

”丸井は首都圏を中心に23店舗の商業施設を展開しており、合計売り場面積は約40万平方メートル。このうち「売らないテナント」は1割だが、5年間で3割まで引き上げる。オーダースーツの「ファブリックトウキョウ」やフリマアプリのメルカリ、米国発で最新家電を体験できる「b8ta(ベータ)」などが既に入居している。各社は店頭では売り上げを追わず、商品説明や試着・体験サービスに注力する。好立地の店舗で客層を広げ、ネット上では得られない生の声を商品開発に生かす。”

丸井は有力テナントを確保するため、5年間でスタートアップに200億円出資する。現時点では28社に出資し、うち12社がテナント出店している。これを出資70社、出店34社に引き上げる。他の商業施設にないテナント構成で集客力を高め、来店客にグループのクレジットカードの作成を勧める。会員数は709万人。決済手数料を中心とした「フィンテック(金融関連)事業」の営業利益はコロナ禍前の2020年3月期に383億円と小売り事業の4倍だった。”

私は関西在住のため、丸井グループにはあまりなじみがありませんが、関西では、神戸、京都、なんばの3店舗が営業しています。しかし丸井グループのクレジットカードの会員数が709万人で、金融関連事業の営業利益が小売り事業の4倍というのはすごいですね。この基盤を活用して、ネット企業への出資とテナント誘致で共存を図り、金融事業での利益拡大を目指すビジネスモデルは革新的だと思います。お恥ずかしい話ですが、私自身はあまりネット通販を利用したことがありません。Amazonで書籍やCDを購入したり、家電量販店のサイトで家電のパーツを注文したりする程度でしょうか。昨年来のコロナ禍もあり、ネット通販が一気に普及しています。インターネット中心で製品やサービスを提供している企業にとっては、丸井との連携のように、直接顧客と接して情報を収集したり、自社の認知度を向上させる場を持つことは大きな意味があると思います。現在進行形で急激に消費スタイルが変化していくことを示す実例だと思います。

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