号外:西友、店舗内レタス栽培で究極の採れたて!

地産地消という言葉がありますが、今、食品スーパーでは、さらにその先を行く取り組みが進んでいます。店舗内で栽培して、採れたて新鮮野菜をそのまま店舗で販売しています。店内スペースをうまく活用し、輸送費などの無駄を省き、消費者に生産現場を見てもらうことも可能で、安心・安全・新鮮を訴求するマーケティング効果も期待できます。

2021年7月2日付け日経ビジネス電子版に掲載された記事より、

食品スーパーの店舗内野菜栽培・販売

”そのレタスは、ただのレタスではなかった。「5F店内農場で栽培、摘みたて販売中」。東京都品川区の西友大森店で見かけたのは、東京育ちどころか、店内育ちのレタス「グリーンリーフ」だった。使い切りサイズで、値段は1袋147円(税込み)である。店内農場があるという5階に上がると、レストランフロアの一区画で、青々としたレタスが大きく葉を広げていた。ガラス越しに栽培風景が見える。水深1cm程度の液体肥料とLED(発光ダイオード)を使った水耕栽培で、種まきから収穫まで35日間。毎日が「晴れ」なので、通常の露地栽培の半分の時間ですくすくと育つ。収穫して袋詰めし、地下1階の食品売り場に持ち込むだけなので、輸送費はかからない。究極の地産地消である「店産店消」を地でいく取り組みだ。“

西友大森店とプランツラボラトリーの取り組み

採れたてだから何より新鮮だ。天候に左右されず、1年を通じて安定供給できるメリットもある。水耕栽培のため無農薬で、虫も土もついていない。この「レタス農場」は店内の空きスペースを活用して2021年3月に開設した。プランツラボラトリー(東京・中央)と組み、同社が東京大学との共同研究で開発した「PUTFARM(プットファーム)」という植物工場システムを、そのままはめこんだのだ。”

”プランツラボラトリーがテナントとして入り、西友は賃料を受け取る代わりに育ったレタスを全量買い取る。つまり、植物工場そのものを”店舗”として誘致したに等しい。そのままでは何の収益も生まない空きスペースが、レタスという食品スーパーにとっての売れ筋商品を生む”畑”に化けた。”

”西友が店内に植物工場を取り入れ始めたのは2020年2月だった。上福岡店(埼玉県ふじみ野市)3階の150m2ほどの区画にプットファームを導入し、レタスの水耕栽培を始めた。GMS(総合スーパー)という業態のビジネスがだんだん苦しくなってきている中で、店内の空きスペースをどう有効活用していくのかという課題に対するアプローチとして取り組んだ。生産や販売が軌道に乗ったため、2号店として選んだのが大森店だった。西友の基幹店であり、食品の売り上げも大きい。生産量も面積当たりの生産効率も上福岡店より引き上げ、毎日360株程度を収穫できる体制を整えた。いまや大森近郊の30店舗以上にも、この「西友産レタス」が出荷されている。コロナ禍で食の安心、安全への意識が高まる中、「顔が見える野菜」として引き合いが増えているのだ。

“LEDなどの人工光を使って野菜を育てる植物工場は初期投資の高さがネックだった。栽培面積を確保するための地方の用地、大規模工場、市場への輸送費などだ。しかし、「西友産レタス」の場合は、栽培システムそのものが、極めて低コストになっている。従来の植物工場のように堅牢な建物をつくり、壁に断熱材を施工するのではなく、軽くて薄い特殊な金属膜を張り、熱をはね返す遮熱技術を採用。システムの設置費用を従来の工場の2分の1から3分の1に抑えた。使う水量も少なく、栽培装置も軽くできる。装置を何台置くかで生産能力の調整も容易にできる。小回りの利く仕掛けだから、西友のような既存の商業施設の空きスペースに導入できた。

“温度や湿度は、最適な栽培環境に収まるようにコントロールしてあるため、生育状況を逐一監視する必要はない。さらに空調トラブルなどによって一定の温度上昇の兆候をセンサーが自動感知すると、アラームが飛ぶ仕組みだ。いずれも、野菜の生育に必要不可欠な要素だけをシンプルに盛り込むことを徹底した結果である。”

“次の目標は販売品種を増やしていくこと。実はレタスだけでなく、既にイチゴやトマト、シイタケ、キクラゲなどの栽培に成功している。プランツラボラトリーの100%子会社である「LEAFRU(リーフル)」のブランド名で展開していく計画だ。さまざまな野菜を店内で生産できれば、さらに見た目が鮮やかになり、より農場に近づく。エンターテインメント感も増すだろう。収穫体験も可能にすれば、強力な集客ツールになるかもしれない。”

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