allbirds、靴にも脱炭素の波、「緑の消費者」が生む新市場
世界の国々は、温暖化対策(地球環境の保全)のために、脱炭素に向けて動き始めています。各産業分野の動向や技術革新についての消費者の関心、期待(要求?)も高まっており、消費動向にも変化が現れています。「2~3割の消費者は値段が高くても環境負荷の低い商品を選ぶ」という調査報告もあります。環境負荷が高い産業と言われているファッション産業こそ、変わっていかねばならないのだと思います。もうひとつ、スーパーで販売される食料品毎のCO2排出量着目した、スウェーデンでのユニークな取り組みについても紹介されています。
2021年7月22日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
”大量生産、大量消費によって生み出される豊かさへの疑問が世界で広がりつつある。価格だけでは選ばず、少しでも環境負荷の軽い商品を好む。そんな「緑の消費者」が生む新市場が企業の商品・マーケティング戦略に変化をもたらしている。”
”若者向けのカフェやアパレル店が立ち並ぶニューヨーク、マンハッタンのソーホー地区。スニーカー店「オールバーズ」の旗艦店には20~30代の男女が集まる。米オールバーズは環境に配慮したものづくりで若者を中心に支持を集め、いま最も注目を集めるブランドの一つ。靴や衣類にニュージーランド産の羊毛やサトウキビなどの天然素材を使用し、生産にかかるCO2排出量を商品タグに明記している。「身に着けるものは自分の考えに合ったものにしたい」。オールバーズのスニーカーはミレニアル世代のアイコンとなり、2016年の創業ながら企業価値10億ドル(約1100億円)を見込むユニコーン企業に育った。”
”「ファッション産業は世界で排出される温暖化ガスの8%を占める」。スイスの環境コンサルティング会社クアンティスは2018年、欧州全体とほぼ同等のCO2排出量をファッション業界が出していると指摘した。欧米の動きは速い。仏シャネルや米ナイキなどが2019年に立ちあげた「ファッション協定」。使う電力の再生可能エネルギーへの転換を2025年に50%、2030年に100%とする目標などを掲げ、加盟ブランド全体のCO2排出量を2019~20年に35万~45万トン減らした。ナイロン製のバッグや小物などで有名な伊プラダは2021年末までに商品のすべてを無限にリサイクルできる再生ナイロンに切り替える。”
”一方で、トレンドに合わせて安価な商品を大量供給するファストファッションの代表格だった米フォーエバー21が2019年に破綻するなど、環境負荷が重いとされるビジネスモデルが消費者の支持を得られなくなってきているとの見方もある。脱炭素の動きは排出量の多い発電や重工業に限らず消費者の生活に及び始めている。米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が今年、日本で実施した調査では「2~3割の消費者は値段が高くても環境負荷の低い商品を選ぶ」との結果が明らかになった。”
”世界ではこの傾向がより顕著だ。スウェーデンの首都ストックホルム。地元食品ブランドのフェリックスは、脱炭素を意識したユニークな試験店舗を2020年10月に開いた。野菜など、並ぶ品は普通のスーパーと変わらない。違うのは値付けの方法だ。商品の値段はCO2の排出量に応じて決まる。顧客1人当たりの排出上限を定められており、排出が少ない商品ならたくさん買える。「気候変動の理由のうち4分の1は食料が占めるのに、どの商品が影響しているかを消費者が知るのは難しかった」。フェリックスは店舗開設の経緯をこう明かす。輸送などで多くのCO2を使う商品は高くなるため、日々の買い物を通じて消費者が排出量を意識でき、温暖化対策につながるとの期待がある。”
”スーパーの商品の産地や廃棄物などを5段階で評価した「グリーン・コンシューマー・ガイド」が英国で出版されたのは1988年。「グリーン」に対する消費者の意識はこれからさらに高まる。グリーントランスフォーメーション(GX=緑転)への消費者の視線を企業は無視できなくなっている。”