号外:浮体式洋上風力発電、英巨大開発に丸紅が応札へ
2021年7月14日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
”日本が洋上風力発電の本命と期待する「浮体式」が海外で実用段階に入る。英スコットランド政府が世界最大級の開発を計画しており、日本から丸紅が7月16日に締め切る入札への参加を決めた。浮体式は日本で導入余地が大きいが、現在主流の「着床式」よりコストが高い。ノウハウを蓄積できれば、日本で洋上風力の普及が進みそうだ。”
”洋上風力は欧州では火力発電よりも低いコストを実現して普及しているが、大半は海底に風車の土台を置く着床式だ。日本の周辺は着床式に向いた遠浅の海が少ない。日本に大量に導入するには海面に浮かべた構造物の上に風車を置く浮体式が必要だが、建設コストが着床式に比べて約2倍高いと言われている。”
”今回、丸紅が応札するのは英スコットランド政府が計画する世界最大級の浮体式の開発計画だ。スコットランド沖の約1万5000平方キロメートルに洋上風力を開発する計画で、このうち約7割が浮体式になる。欧州では洋上風力の普及で着床式の適地が少なくなっており、状況を打破するために浮体式に手を広げ始めた。丸紅は英電力大手SSEの再生エネルギー子会社、デンマークの投資会社との3社連合で応札する。まずは15海域を対象に計1000万キロワット分(最大8600平方キロメートル)について、10年間の開発権(海域占有料は含まない)を入札にかけており、16日に締め切る。2022年春にも落札者が決まり、2020年代後半以降に商業運転を始める予定だ。英BPや仏トタルが既に応札を表明するなど、60社以上が関心を示しているという。”
”今回は海域の所有者である英スコットランド政府が、開発権に1平方キロメートル10万ポンド(約1550万円)の上限を設けた。洋上風力の開発事業者にとって開発権は総費用の数十%に達することもあったが、今回は数%に抑えられる見通しだ。コストを抑えて開発ノウハウを蓄積できれば、メリットは大きい。”
”日本政府は2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする方針で、2040年までに最大で4500万キロワットの洋上風力を開発する計画だ。三井物産戦略研究所によると、浮体式は発電量ベースで原発200基分と着床式を大きく上回る開発ポテンシャルがあるという。”
経済産業省の試算では2030年時点の洋上風力の1キロワット時あたりの発電コストは26円台前半と2020年時点から4円程度下がる見通しだが、石炭火力(13円台後半~22円台前半)に比べてなお高い。浮体式を大量導入するためにも、世界の開発計画に参画してノウハウの獲得を急ぐことが不可欠だ。”
日本が世界に約束した2050年までの脱炭素を達成するためには、洋上風力発電の大規模導入は欠かせません。しかし世界的にもまだ実績が少ない浮体式で、それを実現するには技術的、コスト的な多くの課題がありそうです。何事もやってみなければ分からないこともありますから、海外の開発に参加して経験を積み、ノウハウを獲得することは大変有意義なことだと思います。丸紅の3社連合が無事に落札して、開発がスタートすることに期待しています。