号外:ノーベル物理学賞に真鍋氏!、温暖化予測、気候モデル開発

このところ地球温暖化による気候変動と、それがもたらす自然災害や環境への悪影響についての理解が広がり、世界規模での対策を講じる議論も進んでいます。これらの共通理解や議論の発端となる研究に、日本出身の研究者が大きな功績を残してきたことを、恥ずかしいことですが、全く知りませんでした。今回の真鍋淑郎氏のノーベル賞受賞は、日本人として大変喜ばしいことと感じています。これからの世界の地球温暖化対策において、日本がますます貢献していくことを願ってやみません。

2021年10月5日付け日本経済新聞社電子版に掲載された記事より、

“スウェーデン王立科学アカデミーは、10月5日、2021年のノーベル物理学賞を日本出身で米国籍の真鍋叔郎・米プリンストン大学上席研究員(90)らに授与すると発表した。物理法則をもとに、大気中のCO2濃度が気候に与える影響を明らかにした。温暖化の原因を科学的に示した真鍋氏らの研究は、現在の脱炭素をめぐる議論の発端となった。授賞理由は「地球温暖化を確実に予測する気候モデルの開発」など。人間活動が気候に与える影響の分析手法を生み出した独マックス・プランク気象研究所のクラウス・ハッセルマン氏と、気候など複雑な物理現象に法則性を見出したイタリアのローマ・サピエンツァ大学のジョルジョ・パリージ氏と共同で受賞する。”

”ノーベル賞の選考委員会は真鍋氏が「大気中のCO2濃度の上昇が地表の温度上昇につながることを実証した」とした。太陽から地表面が受けるエネルギーと宇宙に逃げていくエネルギーの差し引き「放射収支」と大気の動きとの関係を世界で初めて解明し、「気候モデルの開発の基礎となった」と評した。”

“真鍋氏は1958年に東京大学で博士号を取得し、米気象局(現・海洋大気局)の招きを受けて渡米した。普及し始めたコンピューターを使って気象を予測する研究に取り組んだ。独自のモデルを用いた計算で、地表から高度数十キロメートルまで現実とそっくりの大気の温度分布を再現することに成功した。さらに、大気中のCO2の量が2倍になると地上の気温が2.3度上がると計算し、1967年に発表した。CO2が長期的な気候変動に重要な役割を果たしていることを示し、世界中で温暖化研究が進むきっかけとなった。

“1969年には地球規模の大気の流れを模擬するモデルに、海洋から出る熱や水蒸気などの影響を加味した「大気・海洋結合モデル」を開発した。同モデルを発展させ、CO2増の気候への影響を1989年に英科学雑誌ネイチャーに発表した。専門家が科学的な知見から温暖化を評価する国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第1次報告書でも成果が引用された。

“温暖化問題の深刻さについて選考委員会のメンバーらは10月5日、「世界のリーダーにメッセージが伝わっているかは分からない」と記者会見で話した。そのうえで「地球温暖化という概念は確かな科学に基づいている」と強調した。”

大気・海洋結合モデル空気や水の流れにより温度などが変化する様子を、大気と海洋を一体化して予測する計算モデル。上空まで含んだ地球全体を、細かく区切って計算することで、将来の各地の気象条件などを見通すことができる。大気中に含まれるCO2などの温暖化ガスによる気候への影響も調べられる。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が地球温暖化をシミュレーションする際に利用された。将来の水不足の問題なども指摘した。天気予報でも、1か月を超える予報ではエルニーニョ現象やラニーニャ現象のような海洋の変動から考慮する必要があり、大気の変動と合わせた計算モデルを使っている”

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