号外:高沢商店、植物由来の和ろうそくを世界に輸出
我が家には小さな仏壇があり、ろうそくは常備しています。いつもは百貨店の仏具売り場あたりで、何となく購入しているように思います。日常生活で、仏具として以外に、ろうそくの必要性を感じる機会はほとんどありません。下記の記事では「ろうそくのある食卓」や「ろうそくの炎の揺らぎに感じる心の安らぎ」について紹介しています。日々をただ慌ただしく過ごすばかりではなく、ろうそくの炎の揺らぎを愛でるような心の余裕を、少しは持ちたいと思いました(無理かもしれませんが・・・)。
2021年10月5日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、
”明治時代から続く和ろうそく店、高沢商店(石川県七尾市)の輸出額が2年間で倍増した。日本の植物を主原料として職人が手作りするため、すすが出にくく、部屋や仏壇を汚さない。世界的な環境意識の高まりや新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要背景に、世界10ヶ国以上から引き合いがある。”
”「うちの食卓に置くと良さそうね」。米国やカナダ、欧州の高級日用品店に並ぶ和ろうそく。価格は5本入りで8000~1万円程度だ。送料がかかるため国内より割高だが、リピーターが増えている。海外の消費者が支持する最大の理由は「植物が主原料である」という点だ。ロウはハゼや菜種、米ぬかなど5種類の日本の植物で作る。芯は和紙と灯芯草(とうしんそう)だ。炎は大きく、ろうそく特有の炎の揺らぎを実感できる。その秘訣は芯の中心部の極細空洞にある。職人が明治時代から試行錯誤して編み出した特殊な構造だ。酸素を取り入れやすく、火がよく燃える。”
”2005年、パリ見本市への出展を機に海外展開を考え始めたところ、高沢社長は世界では「ろうそくの使い道が全く違う」と気付いた。仏事や寺の業務用が中心の国内に対し、海外は食卓や寝室、ヨガに使われることが多い。欧米では環境への意識も高く、植物由来の良さを丁寧に伝えれば「世界を相手に商売できる」と確信した。輸出に際しては商品構成やマーケティング戦略を工夫した。食卓や部屋のインテリアを邪魔しないよう、シンプルなろうそくを主力商品に据えた。英語版ホームページでは、和の要素を取り除き、欧米人があこがれるようなろうそくのある暮らしを紹介している。アジアからも受注が増え、売上高の1割弱を海外が占めるほどに育った。”
”コロナ禍の影響で国内の法事や祭りが中止となり、ろうそく販売は大きな打撃を受けた。苦境を救ってくれたのも海外での経験だ。オンラインショップをリニューアルし、SNS(交流サイト)ではろうそくのある「ゆとりの時間」を提案した。次第に若い世代から「1日の終わりにともすと気持ちが切り替わる」「炎の揺らぎにリラックスする」といった反響が寄せられるようになった。オンライン販売額はコロナ禍前に比べ3~4割ほど拡大。仏具コーナーではなく、和食器売り場に並べる店も増えている。”
”海外事業が成長しても高沢社長の「能登半島にある企業として地域の役に立ちたい」との思いは変わらない。近年、輪島漆器に使う漆の植林活動を支えるため、漆の実を使ったろうそくの製作にも力を入れる。「伝統を次代につなぎ、明かりと共にゆとりのひとときを届けていきたい」との思いだ。”