号外:COP26、「排出ゼロ」実現への分水嶺に-①

10月31日から開催されているCOP26に際し、地球温暖化の現状、各国の対策の進み具合、そしてCOP26が持つ意味合いを簡潔にまとめた記事です。日本でも温暖化による気候変動の影響を身近に感じている今日、決して他人事ではなく、将来の世代のためにも対策を強化していかねばならないと思います。

2021年11月1日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事(英ファイナンシャルタイムズ社説)より、

”英グラスゴーで10月31日に開幕した第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は、気候変動による大きな惨事から地球を守る取り組みにおいて重要な契機となる。断固たる行動を約束できなければ、世界は産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える目標を達成できず、2度を大きく上回る温暖化に向かうことになる。そうなれば、異常気象や海面上昇、かつてない規模の人口移動といった未来が見えてくる。混乱や苦難が生じてから対処すれば、必要な努力や費用は、そうした悲惨な結果を避けるために事前に払うコストよりもはるかに大きくなるだろう。

”COP26は、容赦なく排出される温暖化ガスの削減に向け、各国が一段と野心的な計画を提示する期限として極めて重要な意味を持つ。この期限は2015年のパリ協定で設定された。先進国は、途上国がますます顕在化する気候変動の影響に対処できるよう、資金支援をしていくという証拠を示さねばならない。特にCOP26では、石炭の段階的廃止や化石燃料補助金の撤廃、森林伐採の抑制などの排出削減のための具体的行動につながる新たな動きを促す必要がある。

”現状は前途有望とは言い難い。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)でCOP26の開催は1年延期され、物流面でも混乱をきたした。多くの国は新しい、もしくは改定した排出削減計画を提出しているが、それらを総合すると、世界の気温上昇は今世紀末に2.7度に達する見通しであると、国連が10月26日の報告で明らかにした。先進国は2009年に、2020年までに年1000億ドル(約11兆4000億円)の途上国気候対策支援を実現すると約束したが、パンデミック前の時点で800億ドル程度にとどまった。COP26の議長国・英国が委託した報告書によると、1000億ドルの達成は2023年になる可能性がある。途上国、特にアフリカ諸国は、この点に、先進国が新型コロナワクチンを提供しなかったことと合わせて、強い怒りを覚えている。アフリカ大陸の54ヶ国が世界のCO2排出量に占める割合は4%にすぎないのに、その国々が異常気象の激化で被害を受けているのだ。”

”一方、世界的なエネルギー不足を背景に、最大の排出国である中国は、最も汚染度の高い電力源とされる石炭の増産を指示している。第2の排出国・米国では、ホワイトハウスが議会に提出する歳出法案に確かな気候変動対策を盛り込もうと躍起になっている。世界のCO2排出量は、コロナ禍の影響で2020年に5.4%減と前例のない改善を見せたが、現在はパンデミック前の水準に戻りつつある。

”2015年以降のある重大な変化が、事態の緊急性を強調するとともに、背景を一変させた。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2018年に公表した報告書は、あるべき世界の排出量削減のペースを具体的な数字と日付で示し、気温上昇をパリ協定の「2度未満」ではなく1.5度に抑えることを世界の目標として明確にした。これを達成するには、排出量を2030年までにほぼ半減させ、2050年までに「実質ゼロ(ネットゼロ)」にする必要がある。これをきっかけに各国政府や企業が相次いでネットゼロを宣言、パリ協定の交渉担当者も驚かせた。当時は化石燃料の産出国が排出ゼロ目標を協定から除外しようと抵抗していたからだ。2050年までにネットゼロを達成する目標を掲げるだけでは十分でない。だが、どの政府や企業が気候変動対策の歴史の中で正しい側にいるのかは一目瞭然だ。

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