号外:COP26、「排出ゼロ」実現への分水嶺に-②

温暖化対策は地球環境全体の未来を左右する課題ですから、世界が一丸となって協調していくことが必要です。その際には先進国が率先して行動し、途上国の対応を技術的・資金的に支援していく必要があります。自国都合を優先するばかりでは事態をますます悪化させることになります。当然日本も、先ずは自国の排出量削減目標を確実に実行すること、可能であれば削減目標を上積みすることが求められます。そして同時にその国力に見合った他国・他地域への技術的・資金的支援を実行していかねばなりません。

”COP26が失敗に終わる可能性は実際にある。ただ、成功のカギをある程度握るのは20ヶ国・地域(G20)の首脳だ。世界の排出量の80%を占めるG20は、30~31日にイタリアのローマで首脳会議を開いた。COP26の議論を活性化させるような対応に期待がかかる。一部の先進国は、年1000億ドルの気候対策支援という目標を達成するためにさらなる措置を講じる用意があると示唆している。2009年にG20諸国が打ち出した通り、より厳しい石炭・化石燃料補助金の廃止目標を達成するため、各国が十分な行動をとることが重要だ。2020年の補助金は1590億ドルで、名目上は2010年とほぼ変わりがなかった。中国は9月、海外の石炭火力事業への投資を停止すると表明した。これに続いてG20が石炭の使用を完全廃止する期限を設定すれば、大きな成果となる。”

G7:カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国

G20:G7 + アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、

   韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合

国際エネルギー機関(IEA)は、新規の化石燃料事業への投資を打ち切り、2035年までに内燃機関車の新車販売を終了し、2040年までに世界の電力部門の脱炭素化を図るように呼びかけている。G20首脳はこれに従うべきだ。気温上昇を十分に抑制するためには、G20やCOPのプロセスにおいて世界を新たな大きな変革に導く必要がある。再生可能エネルギー技術を迅速かつ大規模に導入する必要がある。太陽光・風力発電の年間導入量は2020年に過去最高を記録したが、IEAは2030年までにその4倍を導入すべきだという遠大な目標を提示している。”

エネルギー効率の向上や住宅の断熱化、道路交通の電化を実現するには世界的な取り組みが不可欠であり、官民が協調して大規模な資金動員を図らねばならない。また、鉄鋼や化学、セメントや長距離の航空・海運など、削減が最も難しいセクターの排出量も減らす必要がある。既存技術を十分な規模で展開すれば、2030年までに必要な目標を達成できる可能性があるが、2050年までの目標を達成するには、今はまだ初期段階にある技術の活用が必要になる。各国政府は次世代電池や、生産過程でCO2を出さない「グリーン水素」などの分野での研究開発投資につながる支出を増やす必要がある。”

”グラスゴーに集まる政治指導者らは、パリ協定以降のもう一つの変化として、政府や企業の責任を問う新世代の活動家や投資家が台頭していることを認識すべきだ。会議で進展があった場合も、指導者らは途上国と先進国双方の国民に対し、果たすべき義務の難しさや代償を包み隠さずに伝えなければならない。ネットゼロを目指す取り組みはグラスゴーでは終わらない。COP26ではそれをいつまでも手の届かない希望ではなく、実現の見込みがあるものにしなければならない。

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