号外:東京大学が北海道にスマート農業の新拠点

2019年の日本の食料自給率は、基礎的な栄養価であるカロリーベースで38%、生産額ベースでは66%です。単位重量当たり高カロリーである穀類や油脂類は比較的低単価で輸入が多く、畜産物、野菜、魚介類等は高単価で国産の割合が多くなっています。農業に適した土地が少なく、また小規模農家が多い日本では、現在の総人口に対して十分な食料を国産で提供することは、量的にもコスト的にも難しいことは理解できます。しかし、食料は人間にとって最も基本的で必要不可欠なものです。その自給率(カロリーべース)が4割を下回っているという状況は、とても不安に感じますし、その改善のための取り組みが必要だと思います。

2021年11月8日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

ロボットトラクター

東京大学が北海道更別村にサテライトキャンパスを新設した。人口3200人弱の同村は国家戦略特区「スーパーシティ」指定を北海道で唯一目指しており、ドローンの世界最大手も熱視線を注ぐ。稼働する自動走行トラクターは400台以上。世界標準を視野に入れる日本のフロントランナーだ。”

”「ドローンの衝突防止のため、電波の規制緩和の実験をしたいという提案が上がっています」。9月、更別村役場には東京大学やドローン世界最大手・中国DJIの日本法人の代表者が集まっていた。道内の自治体で唯一スーパーシティ指定に名乗りを上げた更別村の人口は3166人(2020年10月時点)にすぎないが、スマート農業を実用段階にまで落とし込んでいる地域としては国内の最先端を走る。”

更別村でのスマート農業進捗状況

”近年は急ピッチでスマート農業のインフラを整えてきた。全地球測位システム(GPS)で自動走行するトラクターの規模は「おそらく日本一」。農薬散布ドローンもすでに約5台が導入され、農家の労働負荷低減に一役買ってきた。更別村が先端技術を活用したスマート農業にカジを切ったきっかけは、2016年に北海道十勝地方を襲った台風だった。村の農業は大きな被害を受けたが、人力では畑に入ることもできなかった。自動運転やドローンが実用化されていれば防げたかもしれない被害で、村はスマート農業のインフラ確立に本腰を入れた。”

”2018年度からは内閣府の「未来技術社会実装」の対象に選ばれ、スマート農業導入の障壁となる規制緩和に乗り出した。ドローンを自動で同時に複数台飛ばすことで農薬散布にかかる時間を短縮する実証実験を2019年に公開。トラクターを利用する場合と比べ3分の1程度の時間で農薬散布を終えた。空撮用ドローンを自動飛行させて作成した地図をもとに、ドローンが殺鼠剤を自動散布するテストでは、所要時間が人力の6分の1程度に短縮された。これらの技術を実用化できれば、農家にとって負担の大きい除草や雑草防除の手間を大きく減らす効果が期待される。”

ドローンを使った実証実験

”今後はトラクターに装着して、除草したり、収穫したりする作業機の自動化を目指す。村内にはすでに高速通信規格5Gの基地局が5基ある。3Dデータなど容量が大きくても受け取れるため、リアルタイムに高精細な映像をやり取りできる。無人トラクターの公道走行や遠隔監視、ドローンの自動飛行などへの活用に期待がかかる。”

”もともと広大な農場と資金力のある大規模農家がおり、東大などの研究機関やDJIに代表される世界のトップ企業が来てさらにインフラが集積する好循環。チャレンジ精神が旺盛で留学経験のある農業経営者も多く、先進的な研究への関心も高い。農業の研究で世界最先端の米国に近い環境が整いつつある。スーパーシティ指定に向けた提案書には、農作業の全自動化による大規模農業や植物工場の構想を盛り込んだ。一番困っている課題を解決するのがスーパーシティの役割。解決策の見えない人口減や高齢化にお加え、深刻化する一方の農業の人手不足もスマート農業で解決する青写真を描く。”

Follow me!