号外:日本海溝・千島海溝地震、政府想定最大死者数は19.9万人

1995年1月17日、私は兵庫県西宮市で阪神淡路大震災(最大震度7)を経験しました。関西で大きな地震に遭遇するとはまったく予想しておらず、個人的な備えもありませんでした。犠牲者数は6,434人、自宅周辺でも家屋が倒壊し、その被害規模に圧倒されました。停電は短時間でしたが、水道とガスが復旧したのは2月末でした。2011年の東日本大震災の死者・行方不明者は約1万8千人(関連死除く)です。そして、日本海溝あるいは千島海溝で大地震が発生した場合の被害シミュレーションが政府から公表されました。想定最大死者数は19.9万人です。

2021年12月21日付け日本経済新聞電子版に掲載された記事より、

”内閣府の有識者検討会は12月21日、岩手県沖から北海道沖にまたがる「日本海溝・千島海溝」を震源域とするマグニチュード(M)9クラスの最大級の地震が起きた場合、沿岸部を震度6強~7の揺れが襲い、30メートル近い津波が押し寄せ、最大19万9000人が死亡するとの被害想定を公表した。北海道や東北で甚大な被害が見込まれており、国や自治体、個人を挙げた防災対策の徹底が求められる。“

最大級の地震は発生頻度は極めて低いものの、起きれば北海道や東北を中心に大きな被害が及ぶとされる。内閣府は2020年4月、日本海溝、千島海溝それぞれを震源域とする2モデルの地震規模や津波想定高を公表した。今回公表したのは、それを基に作成した被害シミュレーション結果。両海溝での地震が連動して同時に起きるとの前提は置いていない。

巨大地震の被害想定図

”死者が最悪となるのは、冬の深夜に日本海溝を震源域とする地震が起き、すぐに非難する人が少なかった場合。逃げ遅れが多数発生すると想定し、1道8県で計19万9000人と試算した。東日本大震災の死者・行方不明者(約1万8千人、関連死除く)の10倍以上になる。犠牲者の7割近い13万7000人が北海道に集中する。青森県で4万人超、岩手県で1万人超と推計した。ほぼ全員が津波によって死亡するとしている。一方、津波避難ビルやタワーの活用・整備、早期避難の徹底などにより、死者は3万人まで減らせるとも試算した。“

地域別の死者想定図

”寒冷地特有の被害もある。津波から逃れても、その後に高台や屋外での避難が続くことで、低体温症への対処が必要になる人が4万2000人に上る。避難所等屋内に移動できなければ高齢者や疾患のある人は死亡する恐れもあり、避難路の整備や防寒具の備蓄を求めている。全壊棟数は22万棟に上る。上下水道の寸断や停電、ガスの供給停止、通信回線の不通は被災から1ヶ月たっても解消されない。新幹線や在来線など2,800ヶ所の鉄道施設が被害を受け、沿岸を中心に道路の多くも浸水するなどして通行できなくなる。避難者は被災直後に90万人、1ヶ月後になっても55万人が避難生活を余儀なくされる。負傷者も多数発生するが、医療機関も被災し、十分な治療を受けられない恐れもあるという。

経済被害は最大で計31兆円に及ぶ。住宅などの復興やインフラの再整備などが25兆円、工場の被災や人員減による生産・サービスの低下で6兆円が見込まれる。内閣府は「対策を講じれば被害は減らせる。行政や企業、地域や個人の備えが欠かせない」と指摘。津波高は30メートル近くに及ぶ地域もあり、防潮堤で被害を防ぐのは現実的ではなく、津波避難タワーやビルの整備など効果的なハード対策に加え、早期避難を促す訓練などを重ねる必要がある。

日本は地震が多発する国ですが、その地震の発生を精度高く予知することは困難です。私たちにできることは、常日頃から想定される地震に対して危機感を持って備えることです。「対策を講じれば被害は減らせる」のです。地域の防災マップを見直し、必要な防災用品や備蓄食料を手配し、非常時の家族との連絡の取り方を再確認しておきましょう。いざという時には、日頃の備えがきっと役に立つはずです。

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